トラウマになっているとすれば、むしろ戦時経済破綻の方ではないかと。で、高度成長中、ずーっとインフレの害が喧伝され、再暴発が予言され続け、そして狂乱物価を迎える。さらに地価・株価バブルとその崩壊。連続コンボ炸裂!
狂乱物価以前から、もっといえば(少なくとも私が読んだ範囲内では)戦後ずーっと一貫して、庶民はインフレ嫌い。自分の所得がどれだけ増えたって、物価の上昇は「悪」と認識するようです。
「墓場鬼太郎」のOPでも食品の値上げに「政治は何をやっておるのか!」って科白が出てきますが、あれは原作通り。水木先生一流の時代スケッチなんです。近年は深刻なデフレ不況が続き、値上げアレルギーも活躍の場が乏しかったのですが、この半年余り、ビョーキが少しも治ってないことが証明されましたね。
実質所得が倍増した時代の一般向け経済本は、物価の高騰が生活を破壊する! みたいな内容で埋められています。その一方で、「選挙対策」のため政治家は金融緩和を求め、好景気を維持しようとした。表面的な非難の大合唱とは裏腹に、好景気を維持すれば選挙に勝てた、ことも伺えます。
ちょっと不思議な感じ。道路財源は一般財源化すべき、あるいは揮発油税の暫定税率を廃止すべき、みたいな意見が(世論調査でもマスコミ報道でもブロゴスフィアでも)人気あるようでいて、当の議員さんたちは「選挙に悪影響」と見ていることにも似ているような。
とはいうものの、世論はいつだって「地方分権を推進しろ、そして地域格差をなくせ」みたいなことを平気でいってきたわけで。本当に票になるのは、どっち(に重点を置いた政策)なんだろう? というあたり、今後も政治家さんの悩みは尽きそうにない。ま、政治家は何をしても憎まれる。
食料品価格が上がってきた昨今、2006年2月にご紹介(補足あり)した石油価格高騰と空理空論の真実(原田泰さん)が改めて挑戦を受けています。その結果はというと、世論の動向もマスコミの主な論調も、オイルショック当時からちっとも進歩していない風で、予想通りだけどガッカリ。
econ-econome さんの記事はリンクしたもの以外も素晴らしいので、マクロ経済に興味のある方はRSSリーダーやアンテナに登録されるといいと思います。
まあ、結局、人のそういうイレギュラーな経済・経済学理解はやがて日常的な局面で個々が恥じかくだけなので市場原理にまかせてスルーでいいんじゃないかと。所詮、人様の信条や頑迷思想を個々打破するには限界があるでしょうから
私の狭い狭い体験からいうと、むしろ「イレギュラーな理解」をしていた頃の方が、恥をかく(?)ことが少なかったような気がします。私はリフレ派の主張に「そうだそうだ」と思うのだけれど、自分で代わりに説明できるほどの実力はない。だから「それはおかしいと思う」といってはみても、相手を説得できない。
多勢に無勢、「頑固なバカ」扱いされてオシマイ。とっても悲しい。
私が郵政民営化に絡めて書いた記事も、いい加減な内容にもかかわらず、人気を得た。スーッと多くの人の脳に入り込み「そうだそうだ」と思わせた。矛盾があろうといい加減だろうと、人気の出る主張、というのがあるようなんですね。もちろんそれは、正しい意見、卓見だ、ということで歓迎されるわけ。
人間の脳の仕組みか何かに欠陥があるのかもしれない。だから、市場原理に任せると、変な意見が勝つ。書店へ行けばわかる。新聞や雑誌でもいい。まあジャンルにもよると思うけど。