趣味Web 小説 2009-01-22

消費税を増税するなら定額給付金とセットで

日本の消費税のいいところは、制度設計がシンプルなことだ。その道の本を読むと、実際の納税・収税はそれほど簡単ではなく、輸入品・輸出品の扱いに複雑さを抱えているそうだが、少なくとも一般庶民の生活と、国内の大半の取引においては、シンプルな付き合い方ができる。

しかし税率アップの話題が出るたび、「消費税は逆進的な性質を持った税だから、生活必需品は税率を据え置くべき」といった意見が出てきて、多くの国民の支持を集める。この調子では、やたらめったら複雑になってしまった所得税などと同じ道を歩むことになりそうだ。

私は「生活必需品だけは低税率にする」ことに反対だ。その理由:

  1. 何が生活必需品なのかは、国民一人一人の価値観や生活状況によって異なるはずだ。中央政府や地方自治体がどのような生活必需品リストを作成しても、全員が満足することはない。
  2. 生活必需品の指定とは、逆にいえば低税率維持品目の規制だ。規制の増加は官の仕事と権限を増やし、行政の肥大化を招く。「発泡酒」「第3のビール」のように、ただ規制を逃れるためだけの虚しい商品開発競争が生じるだろう。さらに必需品認定のボーダーライン周辺で贈収賄を誘発しかねない。
  3. 生活必需品の材料や、設備投資で購入する機械などは、たいてい生活必需品ではない。あるいは、外食産業など、生活必需品たる食品を材料とするが、提供するサービスは高級なものだったりする。現在、輸出入周辺でだけ行われている複雑な処理が、全国津々浦々で必要になってくる。
  4. たしかに欧州などには、生活必需品だけ税率を変えている国がいくつもある。その代償として、帳簿単位ではなく伝票単位で税務処理を行う必要が生じ、膨大な事務管理の手間が発生している。もちろん、山のような書類をチェックする収税官吏の仕事量も莫大。これは無駄な労力だ。

しかし消費税率が上がっても給料は増えないわけだから、何らかの生活保障政策は必要だ。この問題について、生活保護の支給額を増やす、子育て支援の拡充、医療費補助、などを同時に進めるべき、といった貧窮者の保護に焦点を当てた意見をよく見かける。

だが私は全国民に1人あたり一定額を一律支給する「定額給付金方式」がよいと思う。その理由:

  1. 生活必需品は、全国民にとって必要な物なので、全員を保護するべきだ。一部の貧窮者のみ保護すれば、生活費の増大を我慢する大多数の国民は弱者に冷たい視線を向け、弱者攻撃が激しくなるだろう。
  2. 多様な生活スタイルに柔軟に対応するには、世帯単位よりも個人単位の一律保障が有利。それでいて多人数で同居する人々に有利に働くため、自然な子育て支援策になる。
  3. 用途無限定の現金支給だから、各々が本当に必要とする物を、自由に買うことができる。低税率維持品目の規制が不要なので、規制逃れの商品開発や、必需品認定に絡む汚職も生じない。
  4. 消費を控えて貯金する、貯金を崩して消費する、そうした自由があるのはよいことだ。必要なときに必要な分だけ支援する制度には、自由がない。Ex.お小遣い
  5. 民間の事務負担増は税率移行の経費のみ、行政の負担増も(口座登録手続きが一斉に行われる)初年度を除けば生活必需品の税率規制と比較して小さい。

具体的な支給額は……仮に税率が5%上がるとして、自炊する食材の消費税分だけなら年額1~3万円、最低限の生活に必要な全ての消費にかかる消費税相当額を支給するなら年額5~8万円を想定している。

なお現行税率の5%分は給付金を支給しない。もし現行税率分も支給するなら、支給額に対応する金額だけ、既存の生活保障政策の縮減が必要(そうでなければ増税の意味がない)。私は今回の記事とほぼ同様の考えから、ベーシックインカムにも賛成だが、既存の生活保障政策の大幅縮減が大前提である。

2009年春実施予定の景気対策としての定額給付金は、1回ものなので事務経費5~7000億円が問題視されている。だが毎年支給するなら、10年、20年を平均したコストを考えるべきだ。受け取り口座の変更が平均で5年に1回なら、事務経費は1~2000億円となるのではないか。また年金事務などと一体化できるならしたい。

定額給付金は評判が悪いので、きっと「現場の大混乱」が散々報道されるに違いないが、既に年金は2000万人以上に振込で支給されている。それなりにトラブルは生じるに違いないが、だから支給金なんてダメなんだ、という方向へ世論が流れてしまわないことを期待したい。

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