趣味Web 小説 2009-01-28

「定価」の呪い 1

他人の金儲けが嫌いな人々。Amazon が自社の利益にならないサービスを切るのは当然で、Amazon も儲かる商売の枠組みを構築できなかった転売屋がコケることに疑問はない。ただ、転売屋の不幸(?)を大喜びする感性には、私もついていけない。

ここしばらく、ときどき Amazon にカスタマーレビューを書いている。たいていのレビュアーは、レビューを読む人が知りたいことではなく、自分が書きたいことを書く。それが悪いとはいわないが、商品選択の参考にならないレビューの山にはウンザリする。しかし、自分で書いてみると、これがなかなか難しい。

「まず自分がやれ」という反撃は、しばしば変化を嫌う勢力にとって有効すぎる防御策となってしまい、状況の改善を阻害する。だから、他人にいうときには、せいぜいスパイス程度と心掛けるべきだと思う。けれども、自分自身に対しては、折にふれて突き付けていくべき言葉だと思う。

さて、Amzon のカスタマーレビューには、「参考になった/参考にならなかった」という投票ができる(書いた本人はできない)。やはり「参考になった」票が多く入ると嬉しい。幸い、私のレビューは高打率を維持しているけれども、上を見るともやもや感がないではない。

映像コンテンツなどでは、特典付の初回限定版は通常版より高い値段が付けられていることが多い。しかしゲームソフトの場合は、初回特典の有無で価格が変わらないことが多い。当然、特典付の限定版から先に売り切れる。すると、コレクター商品の専門店などが登場し、定価より高い値段で限定版の販売を開始するわけ。

こうなると、俄然レビューが活気付く。「ぼったくり許すまじ!」の声が吹き荒れるのだ。私は別に、ぼったくりとは思わない。需要が供給を上回るなら、価格で調整するのが市場の仕組みだ。「**店では定価で買えたよ!」だから何? 定価に縛られた計画経済の非効率を倫理道徳で守れば、経済厚生の発展は阻害される。

人気ゲームソフトなどの場合、コレクター商品の専門店などを非難するだけのレビューに「参考になった」票が100くらいポポポンと入る。似たようなレビューがたくさんある中で、ほんのいくつかのレビューだけがそうなるのだから、私にはわからないツボを押した名レビューなのだろうが……釈然としない。

コレクター商品が定価より高値で取引されるのは珍しいことではない。「じゃあ大手量販店がこぞって限定版を売り惜しみしたらどうなるんだ!」なんて意見も聞くが、ゲームソフトはたいてい発売初週の売上が総売上の半分程度となる。在庫を抱えるのは重大なリスクで、2週目以降は限定版も値崩れすることが多い。

2ヶ月経っても限定版の在庫が捌けず、悲惨な安売りに突入することも珍しくなく、在庫を長期間抱える費用を考えても、コレクター商品専門店が濡れ手で粟の大儲けをしているわけはない。そもそもニッチ市場なので、大手が参入したら、あっという間に値崩れが起きて商売の前提が成り立たないだろう。

スーパーのタイムセールをはじめ、同じものに複数の値札がつくことは珍しくもなんともない。人それぞれ事情があって値頃感も違うのだから、それぞれが納得する値段で売買が成立すればよい。

在庫処分を優先する大手量販店を巡って限定版の残りを探せば定価で買える。ネット経由でコレクター市場にアクセスすれば、割増価格になる。これはタイムセールに自分の生活時間を合わせる努力をすれば、同じ食品を安く買えるという話と何ら変わらない。前時代的な「定価」に惑わされるからおかしなことになる。

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