趣味Web 小説 2009-02-17

アメリカでも景気対策と増税はセットで提示、の謎

アメリカでは大規模な財政政策の実現に向けて、「これは将来的な経済成長の礎となる云々」と説明付けられているそうだけれども、実際のメニューを見る限り、直接的にそんな効果がありそうには見えない。グリーン・ニューディールが目玉だけど、じつは道路や橋の補修に使われる金額が一番多かったりする。

オバマ政権の経済政策を「これからのアメリカの成長戦略が見えない」と市場が評価して株価が下がっている、との報道が続いている。無茶をいわないでほしいところ。成長分野を発見する能力が政府にあるなら、計画経済でOKなのだ。せいぜい成功軌道に乗った分野を補助してアシストする程度だろう(それだって危険)。

海の向こうの人々も、税金を需要の一時的な「つなぎ」に使います、では納得しないのだろうな。それで「安心して研究開発などに投資できるような経済環境を守ることは将来の経済成長のために必要だよな……」と考えて、いろいろ耳あたりのいいことをいうのだろうと思う。

追記:

そして2月22日には2013年度の予算で財政赤字を半減する計画が発表された。予算圧縮と増税のセット。日本の「定額給付金+消費税増税」に私はポカンとしたけれど、財政赤字は通貨の信認を毀損する云々といって、将来の財政健全化を主張すると国民が歓迎するのは洋の東西を問わないらしい。

注1:ふつう景気対策としての減税や財政支出は、消費などの需要を増やすことを目的としている。しかし一時的な減税の先に(恒久的な)増税があるとの認識が広まれば、人々はお金を預貯金として保持し、消費を増やさないだろう。そこで、減税の計画を公表するとき、増税の計画は曖昧にするのが望ましい、とされる。

注2:通常、経済が成長するとき、税収はそれ以上に増える。したがって、減税分は絶対に「増税」で補填する必要がある、というわけではない。減税の計画を公表する際、増税の計画を曖昧にするのは、実際問題、必要な増税幅を予め決定するのは不合理だからでもある。

ところでアメリカの増税の中身だけれども、25万ドル以上の収入がある人への課税を強化するそうだ。累進課税の強化や緩和については、どの入門書にも賛成や反対の理屈が書かれている。ただ残念なことに、私は実証的な研究を見たことがない。オバマ政権の政策変更も、とくに客観的な根拠に基づくものではないらしい。

累進緩和でやる気が出る人もいれば、逆の人もいる。全員が満足する道はない。だから理屈VS理屈では決着はつかない。「日本」とか「アメリカ」といった母集団を設定して、一人一人にはそれぞれ言い分はあるだろうけど、全体として累進強化 or 緩和が経済成長にプラスなのかマイナスなのか、調査する必要がある。

もちろん、時代による変化もあるだろう。だから折々に再調査して、見直していけばいい。

ともかく、これは素人が無理をいっているだけなのかもしれないが、何かうまい調査方法を見出して、客観的な根拠を元に政策を変更してほしいと願う。私は個人的な事情から(当座の立ち位置としては)累進強化に賛成だが、オバマ政権によるアメリカの政策変更(?)を単純には歓迎できない。

注3:アメリカが財政再建の見通しを示したのは、通貨の信認を維持するため、といわれる。FRBが長期国債の大量買入れによる長期金利低下策を最終手段として温存する気配となっており、景気対策の財源として国債の海外販売を推進したい。となると、ドル安はまずいのだという。

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