4月4~8日の11:00~16:00(日本時間)のいずれかの時刻に北朝鮮が人工衛星を打ち上げるのだそうで、連日、ニュースになっている。ロケットは3段式で、既に立派な発射台に設置されており、衛星写真にその姿が捉えられている。
以前から弾道ミサイル発射実験の噂はあり、2月頃から緊迫した空気があった。北朝鮮が国際海事機関(IMO)へ試験通信衛星打ち上げの事前通告を行ったのは3月12日夜のこと。3段ロケットの1段目は日本海、2段目は太平洋に落ちる計画とわかった。
首相官邸は即座に情報連絡室を設置。27日には官邸連絡室に格上げしている。
外務省も3月12日に外務省連絡室を立ち上げた。2月以降の北朝鮮のミサイル問題に関する外務省幹部の記者会見や、各国首脳・外相との会談の内容は、以下にまとめられている。
国土交通省は危機管理対策室を立ち上げ、3月12日23時35分、航行船舶に対する航行警報を発出した(発出先は第一、第二、第九管区)。翌13日、ノータムを発出。
水産庁は3月13日8時に水産庁漁業安全情報を全国に発出、12時20分に緊急事態対策本部を設置、14時には漁業関係団体を集めて情報連絡会議を開催している。
3月27日、首相官邸で安全保障会議が開催された。結果は同日午前に官房長官が発表している。
政府が広く一般国民に周知したい内容は、政府の対応と補足のコメントをまとめたPDF資料の内容だと思う。以下、転載。
- 北朝鮮飛翔体発射事案に関する対応
政府としては、今回の北朝鮮の飛翔体発射事案に関して、北朝鮮に対し打上げの中止を強く求めているところであるが、そのような努力にもかかわらず、北朝鮮が発射を強行した場合には、国民生活の安全・安心を期するとの観点から、以下のとおり対応するものとする。
なお、政府としては、想定される飛翔体の飛翔態様等を考慮すると、我が国領域内に落下するケースは、通常は起こらないと考えており、国民各位におかれては、平常通りの生活を送って頂きたい。
- 1 飛翔体落下への対処について
- ① 防衛大臣は自衛隊法第82条の2第3項の規定に基づき、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、飛翔体が我が国に飛来することが確認される場合にそれを破壊する措置を命ずるものとする。(※)
- ② 防衛大臣は、破壊の措置が実施された場合には、その結果について直ちに公表する。
- (※)防衛大臣が命ずる措置の具体的内容については、本日(3/27)中に公表する予定。
- 2 飛翔体に関する情報提供について
- ① 政府は、北朝鮮が飛翔体を発射した場合には、国民各位への周知を図ることを目的として、直ちに地方公共団体及び報道機関に対し、発射したとの事実の情報提供を行うものとする。
- ② 政府は、①の国民各位への周知を迅速かつ円滑に行うことを目的として、地方公共団体及び報道機関に対する情報提供の要領を確認する。
- 3 飛翔体が我が国の領域に落下した場合の対応について
- ① 政府は、北朝鮮が発射した飛翔体が我が国の領域に落下したと推測される場合には、直ちに地方公共団体及び報道機関に対して必要な情報提供を行うものとする。
- ② ①の情報提供の後、速やかに現地の確認を行うとともに、立入り禁止区域の設定など所要の活動等を行うものとする。
- 内閣官房長官コメント(北朝鮮の飛翔体事案への対応について)
北朝鮮の飛翔体の発射については、政府としてはその中止を強く求めているところですが、北朝鮮が飛翔体を打ち上げた場合の我が国への影響について、政府は以下のように評価しております。
まず、飛翔体が不具合なく打ち上げられた場合は、第1段目が日本海上に設定された危険区域に、また、第2段目が太平洋上に設定された危険区域に落下すると考えています。
次に、飛翔体の打ち上げが失敗する場合についてですが、第1段目の切り離し以前に不具合が発生するようなケースでは飛翔体は我が国まで届かず、我が国領域への影響は生じません。また、第2段目のロケットが燃焼開始すれば、通常、飛翔体は、我が国領空の上を越えて飛翔することとなります。ただし、通常は考えにくいものの、第2段目の燃焼開始後間もなく、突如燃焼が中断するようなケースでは、飛翔体の一部が我が国領域内に落下することも全く考えられないわけではありません。
従って、政府が第一に備えるべきは飛翔体が不具合なく打ち上げられる場合についてであると考えており、船舶・航空機の運航者におかれては、発出済みの航空情報(ノータム)及び航行警報に従い、4月4日から8日までの11時から16時までの間、設定された危険区域内に立ち入ることは控え、注意して航行して下さい。
飛翔体が我が国領域内に落下するケースは、通常は起こらないわけですが、政府としては万万が一に備え、弾道ミサイル防衛能力を有する自衛隊の部隊を展開させ、警戒態勢をとらせることとします。さらに念のため、自衛隊・警察・消防・海上保安庁を所管する閣僚に対しても所要の待機態勢をとるよう指示したところです。
各交通機関を含め、国民の皆様におかれては、北朝鮮が飛翔体の打上げに関し事前通報している時間帯においても、平常通りの生活・業務を続けて下さい。
今後とも政府は、各地方自治体に対し、可能な限り情報提供してまいります。また、北朝鮮から飛翔体が発射された場合、速やかに必要な情報をお伝えいたしますので、テレビ・ラジオ等の情報に注意して下さい。
なお、本日、政府は、防衛大臣が自衛隊法第82条の2の第3項にいう緊急対処要領に従った命令を予め発するとの方針を確認いたしました。これは、飛翔体が我が国に向けて飛来するおそれがあるとは言えないものの、万が一、飛翔中に事故が発生した場合等に備える必要があるとの考えによるものであります。
防衛大臣が命ずる措置の具体的内容
は、予定通り27日中に公表された。防衛省は31日、状況認識をまとめた資料「北朝鮮のミサイル関連動向について」を公表。
突発的な事態に政府が機能するまでには、半日くらいかかるようだ。1998年8月31日のミサイル発射実験(日本付近の海域に落下)では事前通告がなく、ミサイルが海に落ちるまでの間にできたことはほとんど何もなかった。今回は、そのときとはいささか様相が異なっている。
まず、船舶や航空機がミサイルの破片などとぶつかる危険は低い。そして時間的余裕と自衛隊法改正が効いて、万一の備え(=北朝鮮のミサイルが予定のコースを外れ、日本の領土・領海に落下することが確認された場合に限って、安全確保のため空中で破壊する措置の準備)も可能となった。
ところで、北朝鮮の人工衛星打ち上げは、多くの国が中止を求めている。その理由は、国際連合の安全保障理事会の決議1695号と1718号に示されている。
ようするに、「危険な行動を繰り返している国がミサイル技術を持つことを認めない」という内容だ。おいおい、ミサイル兵器を好き勝手に大量使用しているアメリカこそヤバい国だろう、ふざけるな、という北朝鮮の心情は理解できる。決定的な対立が生じたら、アメリカのミサイルは日本にも降り注ぐに違いない。
いま日本とアメリカは北朝鮮を脅威と認識しているため、ミサイルへの転用が容易なロケットを発射することも国連決議に反する、と主張する。しかし決議には missile という言葉しかないわけで、判断が割れるのはわかる。北朝鮮のミサイルを重大な脅威と感じていない(らしい)中国とロシアの態度は煮え切らない。
個人的には、とくに1718号の文言は、衛星打ち上げ用ロケットの開発も禁じている、と読むのが自然だと思う。まあ、決議の解釈がどうあれ、北朝鮮を信頼できない日本人としては、打ち上げ中止を望む。それが無理なら、予定通り無事に実験が終了することを期待したい。
私は粛々と仕事をこなす政府を信頼して、ふだん通りの生活を送るつもりだ。
政府の対応への賛成・反対は別にして、私のこの記事を読んだ方は、政府の発表も1回くらいは目を通して、それから判断してほしいと思う。政府の言葉を信じない、という前提を立ててもいい。それでも、内実はどうあれ「実際に発信している情報の内容」は無視できない。
日本政府は好戦的な政策
を採用し、北朝鮮に宣戦布告
したのだろうか。強硬な姿勢を示してカタルシスを演出
しているだろうか。Yes という答えもありうる。だがその場合、実際の言葉との差異を埋める作業が必要になるはずだ。
こっちも同じ。「発射されたら迎撃」というイメージが広まっている。しかも2ちゃんねらーは楽しそうだ。サッカーの試合じゃないんだけど。
そして例によって一番ひどいのがYahoo!ニュースのコメント欄。国民の意識がこうだから、自由主義経済の働きによりマスコミの報道が「迎撃」に焦点を当てた内容になってしまうのだ。