景気対策の財政支出というと公共事業の類ばかり議論になるのが不思議だった。
実際、公共事業が減ったために不景気で沈んでいる地方も多いのだろうけれども、だいたい景気対策が必要になるときというのは、民間の設備投資が落ち込んでいる。直接、それを支援できたら、それが一番いいはずだ。
地価や株価が下がると、金融機関の自己資本が危うくなり、貸出・借換の基準が厳しくなる。すると企業は、新しい設備投資が難しくなる。また既存のプロジェクトも将来の見通しが不透明になると銀行に資金を回収されかねない。結果、企業は設備投資を抑制して、安定した事業だけに集中して手堅く儲けようとする。が、みんなが同様の行動を取れば、経済活動が縮小して、みなますます経営が苦しくなっていく。当然、給料も減ってしまう(と予測される)から、家計の消費も抑制される。よって経済は縮小均衡を目指すことになる。
銀行への資本注入が不況の根治策などといわれるのは、不況の連鎖の出発点である金融機関の防衛行動を止める方策だからだ。が、上記の流れを見れば、最終的な消費が旺盛なら、「あれ? 不安になる必要はないぞ。ちゃんと設備投資して生産を拡大した方が儲かるんじゃないか」という話になって、やっぱり不況は止まるだろう。
景気対策としての公共事業は、もちろん政府による消費を増やす方策だけれども、これは不景気でなくなったら終ってしまう。だから、「お、この分野がこれからは伸びるのか!?」と金融機関が本腰を入れて積極的に貸し出しを増やすような動きにつながるものではない。
この3月に支給が始まった日本の定額給付金2兆円については、様々な批判があった。しかし景気対策としては一定の理があると思う。
問題は、貯金に回る割合。全員給付なので、低所得層はおそらく単純に消費を増やすことになる。問題は中・高所得層。インタビューでは「**に遣う」などと答えても、現実には「**は定額給付金で買ったし、余ったお金は貯金しておこう」となりがち。現金ではなく商品券を配った地域振興券が成果に乏しかった理由も、これだった。
それでも、需要不足への対応では政策を総動員すべきと考えるので、定額給付金には賛成する。
後にスタートしたエコポイント制度により液晶テレビなどの対象商品の売上が一気に回復した。ポイントサービスで消費を促進する施策が早速成果を出した。しかしエコポイントは政府指定のエコ商品の購入のみ補助するので、市場による資源の効率的な分配とは逆方向の発想といえる。
買い物をするたび支払い金額の数%分ずつ使用できる初期チャージ額1万2千円の電子マネーカードみたいなものがあれば……なんて考えたが、現状では無理な案。もっと簡単に導入できる妙案はないか、と考えている。