趣味Web 小説 2009-10-29

書店では平積みなのにネットでは目立たない本

チャイナ・アズ・ナンバーワン

近所の書店ではずーっと平積みになっているのにAmazonではあまり動いてないみたい。関志雄さんの本って、Amazonだとカスタマーレビューも少なかったり。

中国経済をテーマにした本には、根拠をロクに示さずに悪口を書いたり、中国の成功=日本の滅亡という決め付けを前提とした脅威論を説くようなひどいものが多い。その点、本書は客観的なデータが多く、分析も穏当です。こういう本が売れるといいと思うんですけどね。

世界同時不況の中でも高成長を維持して世界の注目を集める中国経済の現況を豊富な統計数字で総覧できる、便利な1冊です。さらに中国経済が直面している課題を整理し、それらに対する政府の経済政策を紹介、近未来を展望します。手堅い内容であり、いま最も信頼できる中国経済の解説書です。

データ量は類書を圧倒しており、本書と比較対照すると、多くの本がイメージから出鱈目を書いていることがわかります。とくに特徴的なのは、10~20年ほどのスパンのグラフを多く採用し、歴史的な観点を随所に盛り込んでいることです。それゆえ著者は、安直な中国脅威論や蔑視には与せず、手際よく人口大国の実力を腑分けし、抑制された筆致でその行方を予想します。

かつて共産党指導部は計画経済による重工業の発展を企図しましたが、比較劣位の産業に注力する政策は失敗し、中国経済は停滞しました。この反省から漸進的な自由主義経済の導入を進めてからの30年間は、年平均9.8%の高度成長を持続しています。結果、巨大な人口を背景に、多くの経済指標で世界一となり、GDPも米国越えが視野に入りました。

しかし今なお中国政府の経済政策は計画経済の尾を引きずっており、労働集約産業の十分な発展を待たずに資本集約産業の高度成長を促進し、資本の移動を制限し、為替の管理に腐心し続ける一方、再分配の仕組みは整備不足のまま。その歪みが、増えない雇用、高まるインフレ率、資本の余剰、格差の拡大による社会不安として現れています。

以上の筆者の分析から導かれる経済政策は、1)自由な経済環境の整備、2)市場の失敗を補う枠組の構築、3)社会保障制度の充実、のはず。ミクロ経済に介入し続ける中国政府の経済政策を筆者が好意的に紹介するのは不思議です。日中FTAの実現による国際分業の推進を説く終章の提言には納得できるのですが……。

脱貧困の経済学-日本はまだ変えられる 国家の貧困―格差社会を今こそ紛砕せよ!

雨宮処凛さんの対談本2冊。ネットでたくさん感想が読めるのは「脱貧困の経済学」なんだけど、書店で目立っているのは断然「国家の貧困」のほう。こういう違いって何に起因しているんだろう。

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