趣味Web 小説 2009-11-02

もし私にできる恩返しがあるとすれば

クロネコのドライバーが落とした携帯電話を発見した人が集配センターに電話したら、応対がひどくてプッツンしたという話題。

人のやることなんだから、まあそんなものだろう、と思う。どちらも。

出張用のPHSを同僚が落として、拾った人から私の席に突然電話がかかってきたとき、相手を怒らせないような対応ができる自信は全くない。逆に、最初は親切のつもりだったのが、何かが逆鱗に触れて当初の意図が吹っ飛んでしまうこともまた、珍しい話ではない。

私の場合、高校生のとき、封筒を落として、拾った人が家まで届けてくれたことがあります。じつはその封筒、捨てたつもりのもの。ところが、ゴミ箱付近のポストに葉書を出す際、ポストの上にひょいと置いて度忘れしてた。だから届けてもらっても「そんなバカな……」と呆然としてしまい、お礼の言葉が出なかった。

高校生にもなって礼のひとつもいえないのか、と我が身を恥じたんだけど、ビックリしたときの対応力なんて、今も大差ないと思う。ともかくその場は、母が何度もお礼をいってくれて、私は一緒に頭を下げただけ。失われた言葉を取り戻したのは、数分後のことでした。

そういうことがあって、ひとつわかったのは、「親切なんて報われないんだ」と。だけど、封筒を届けてくれたのは、初老の紳士だった。道を尋ねながら、3kmも歩いて届けに来てくれたわけ。これまでの人生で、何回、人に親切にしてきたんだろうな。そして何度、期待を裏切られてきたのだろう。

もし私にできる恩返しがあるとすれば、この先くりかえし嫌な目にあっても、あの初老の紳士と同じくらいの年齢になるまで、人には親切にし続けることくらいしかないだろう。そう思うんだよね。

私は都電で通勤しているんだけど、基本的には、席が空いていれば座る性格なんです。その代わり、どんどん席を譲るようにはしているつもり。ところが私は眼力不足の無礼者らしく、けっこう固辞されることが多い。そのたび、もう席なんか譲るのやめようかな、なんて思う。

でも私は、すぐにお腹が痛くなるので、席を譲られて助かったことが何度もあるんですよね。私に席を譲ってくれた人が、過去に一度も「いえいえ結構です」といわれたことがないはずがない。そういう悲しみを乗り越えて親切を貫いてくれた人々のおかげで、今の自分がある。その私が、ここで挫けていいだろうか。

リンク先の人は「ひどい対応」にプッツンしちゃった。私も絶対にそうならないとは保証できない。そんなに自分を信じてない。ただ、リンク先の人を責めるつもりはなくて、あくまで自分の問題として、「私は親切を貫きたい」と。

第三者的に文章を読んでいる時ですら、そう思えないようなら、この先、私が人生の目標を達成できる見込みなんか全くない。結局は口先番長に終るのかもしれないが、まずは意志がなければ始まらない。

ところで

同僚が出張先で電話を落として、拾った人が電話内の電話帳を調べて私の席に連絡してきたら、どう回答したらいいんだろ? 私の知る限り、職場の出張用PHSには何の認証もかかっていないわけだが。セキュリティ的にどうのこうのといわれても、東京から幕張メッセまでだって、飛んでいくというわけにもいかないし。

警察に届けておいてください、とかいったら怒られるんだろうな。でも正解がわからない。

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