趣味Web 小説 2009-11-07

組織の文化を新人にどう伝えるか

いつの間にか、自分がどうやって今の「常識」を身につけたか、忘れてしまうんですよね。

みんな最初は何も知らなかった。無知に起因する行動は、知識を与えることで解決できます。

文化の違いに起因する行動は……これは対応を少し考えないといけないかな。国や民族などにとって文化が異なるように、企業にも文化があるんですよね。全ての企業があらゆる文化に開かれていなければならない、という考え方には、私は与しない。もちろん各企業が属する社会の許容する範囲内という制約はあるけれど、その枠内で一定の偏りというか、個性はあっていいし、個性を認めないと企業の競争は活性化しないと思う。

個人がバラバラで動くより組織を作って活動した方がメリットのあることが多いから、企業は存在する。企業の文化は、組織の作り方、活動の仕方に密接に関係しているもの。各個人が自分の価値観を少しも譲らずに、自分が正しいと思うことをストレートに表出していくなら、組織のメリットがなくなってしまう。

よく聞くと問題の新入社員はマンションのテレホンセールスを行っていたという。そして、アフターサービスをお客に説明する際に「万が一、うちのマンションを買ってもらえたら」と話したそうなのだ。「まずありえないだろう」というニュアンスを持つ「万が一」をお客に対していうのは御法度。「そんな常識的なこともわからないのか」と課長が注意すると、悪びれた表情も見せずに「スンマセン」と答えたというから、そこで課長の怒りはさらに燃え上がった。

私の勤務先には、中高年の営業マンでも、「万が一」という言い方をされる方がやってきます。他の部署で取引があるので、あなたの部署でも、もし何かお声をかけていただけるような事案があれば……と。押し付けがましくないから、私も安心して会える。押しが強い会社は敬遠される。そういうケースもあるんだよね。

ひょっとしたら、私には敬遠されるとしても、押しが強い会社の方が、平均的な営業成績はいいかもわからない。それでも、ガンガン売り込む会社が、私から注文を取る可能性はゼロ。そもそも面会してもらえないんだもの。だから、「万が一」という営業スタイルの会社も、滅びない。

これはどちらが正しいというのではなく、どちらのタイプの企業も世の中に存在するべきなんです。

……以上を踏まえて、もし私が先輩なら、新人さんに「うちはこういう方針の企業なので、君が今のスタイルを守り続けるなら、社内で評価を得ることはきわめて困難だろう」と説明することになると思う。営業スタイルは会社の方針なのであって、それに社員が頑として従わないのでは、マネジメントに不都合がある。

新人さんが将来、昇進してから、自分の責任の範囲内で、己の信ずる営業方針を実施するのは問題ない。方針に対する意見を求められたときに、自分の主張を行うことも、正しい。洗脳は、されちゃダメ。でも、日々の仕事の中で、自分の意見を組織の方針より勝手に優先させてはいけない。これは区別可能なこと。

新人さんに激怒した課長は、組織に染まってしまった人なんだよね。「万が一」は御法度だなんて、別に普遍的な話じゃない。その組織(あるいは業界)では長年そうだった、というだけ。なのに、狭い知見が世界の全てになってしまっているから、想像の範疇を越えた事態にパニックになる。

「それくらい常識だろ」といいたくなったら、よっぽど注意が必要なんです。はて、それって、どれくらいの範囲内の常識なんだろう、と。ふと気付くと、自分の視界って、狭くなっているもの。

私もバイト先では「常識がないと困るよ」と叱られることが多かったけど、今の勤務先では、先輩方が「この会社の常識」を繰り返していねいに教えてくれました。今でも新しい仕事をして、これまで縁の薄かった部署と一緒に仕事をするたび、「これについては、こういう風に考えることにしています」と教えてくれる。

部長や取締役でも、「自分が何を知らないか」には自覚的で、よくわからないことに関しては一般社員に初歩的な質問を繰り返すことを厭わない。私の席のところまで取締役がやってきて「いま忙しくなかったら、これについて教えてほしいんだけれども、大丈夫かな?」と質問されるので、私はビックリ。

まあ、どの程度、こういうコミュニケーションをとっていくかというのも組織の方針なので。「常識だ」といって説明を省く企業もあっていいとは思う。私企業は、ようはルールを守って儲かればいいので。一定の枠内で、やり方は自由でいいはず。

それでもね、こういう記事が出てくるということから類推するに、常識押し付け系の文化が、日本企業では多数派なんでしょうね。単に多数派というだけならいいけど、それが「常識」となって、他の選択肢があると気付かれないようだと困るな、と思う。

幸い、記事には続きがあって、「いかにいまどきの新人と向き合うか」という方向で話が続いているよう。

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傾向としては変化があるけれど、やっぱり世代差より個人差ということがわかるので、個別の事例について考えるなら、役に立たない資料。でも世代論をぶつには格好の材料を提供していると思う。

ひとつ注意点。この資料では、社会人10年生と1年生を比較しているのだけれど、今の10年生が1年生だった頃のデータはない。だから、世代の違いなのか、経験の違いなのか、というあたりが謎になってます。

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