趣味Web 小説 2009-11-18

「質問できない新人」の簡単な指導法

1.

新入社員教育の話題。IT企業でプログラマーを育てるケースについて、2つの記事を読みました。

「わからないことがあったら質問しなさい」と言い聞かせても、新人はGoogle検索で時間を浪費し、1日に2回くらいしか質問をしにこない。しかもその内容は本来の課題から明後日の方向にズレており、肝心の基礎学習が進んでいない。このままではコピペプログラマーになりそう、とひでみさんは心配します。

これに対してteruyastarさんは、半ば放任状態の新人が質問をしないのは当然、きちんと教育したければ上司も楽はできない、と説く。しかし指導の見返りは無いに等しく、教育好きの人以外に理想的な指導は不可能。それでもTwitterやミラーモニターなど、道具の工夫で多少の改善は見込める、といいます。

私にプログラマーの経験はありません。だから単純に応用できる話ではないでしょうが、今の勤務先、過去のアルバイト先で、「なるほど、これはいいかも」と思ったアイデアがあるので、ご紹介します。

2.

新人は書類を持っていないので、とりあえず、引き出し等のないシンプルな長机で仕事をさせます。すると、1つの机に椅子を2つ並べられます。指導係は自分の電話とパソコンを持っていき、新人と並んで仕事をします。指導係は書類等の都合で何度も席を立つ必要がありますが、意外と何とかなるものです。

こんなことで、結構うまくいく。仕事の息抜きに新人の面倒を見たり、雑談をしながらヒントを与えたり。新人がノートとペンを忘れても、「じゃあメモ帳に書きなさい」といえば済みます。「二人とも椅子に座ったままコミュニケーションできる」という、ただそれだけのことが、意外と大切だったりするのです。

騙されたと思って、ぜひやってみてください。

教育というと、心と心の問題ばかり注目されがちですが、人の心は案外、物理的な条件に左右されるもの。いちいち席を立って移動する必要があると、指導も質問も億劫になります。逆に指導係と新人の距離が近ければ、面倒見の悪い指導係でも助言欲がわくし、会話などを通じて新人の心理障壁を下げやすいのです。

3.

あとやっぱり、新人は不安なんです。指導係が怖くて、質問できなかったりする。それで時間を浪費し、ますます恐怖に支配されていく。1日一緒にいれば、指導係といえど、昼休みに間抜け面で鼻毛をカットするとか、テレビ番組の予約録画を忘れて悲しむとか、ポカして部長に叱られるとか、いろいろわかります。

私の経験を少し。通勤ファッションに気合を入れてる先輩が「安全靴って蒸れて嫌よね」といって靴を脱いだとき、「あっ」という。目を落とすと、靴下のかかとのところに穴。先輩は夕方までずっと靴下を気にしてもじもじしていました。理由は不明ながら、私はこの一件で出社が楽しくなりました。

以降、私は何度も先輩に意見をぶつけました。「それっておかしくないですか」「こっちの方がよくないですか」「(とくに代案はないけど)納得できません」……しかしそのほとんどが、偏見、思い込み、勘違い、覚え違い、一般化できない成功体験、といった問題に起因しており、毎回コテンパンにされました。

私が潰れなかったのは、先輩のいないところで「もじもじ靴下……」と呟くと、不思議と元気が出たからです。こうして、先輩は、新人の厄介で頑固な欠点を短期間にいくつも是正することに成功しました。すごい! でもこれって、1割くらいは「指導係が新人と並んで仕事をする」アイデアのおかげだと思うんです。

補記:

この記事のポイントは、徳保隆夫は成功体験を安直に一般化する誤を犯すタイプだ、ということ。読者の皆さんは、その点、よくよく注意してください。

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