今後民主党が「古い自民党」的体質を強めてバラマキ志向になり、改革(主に財政再建志向を指す)から逆行するような事態になれば、今度は自民党がバラマキ反対・財政再建路線を強く打ち出す(ついでに消費税増税を抱合せ販売する)ことにより大復活する可能性はいくらでもあると思う。
菅原琢『世論の曲解』の分析からすると、そういうことだと思う。ただまあ、自民党が信用されるかな、というあたりが怪しいけど、民主党政権がもっとひどければ消去法で。
ここで悩ましいのはリフレ含む景気対策は(こと選挙対策としては)有効な政策にならないだろうということ。麻生政権がこけたのは国民の真の願望である「財政再建」より「景気対策」を強調したからで、麻生個人の資質的問題は案外本質ではないのかもしれない。
小泉政権は、税収減でも予算をほぼ自然増させる(高齢化の進展で自動的に社会保障費が膨らむ)ことで、消極的ながら財政を緩和的にした(国債もずいぶんたくさん発行した)のだけれど、国民は「自然増を毎年2000億円分圧縮する」パフォーマンスで「財政再建に取り組んでいるな」と認識しました。世論の支持を保ちつつ財政支出をやっていく、うまい方法だと思う。
ただ、現代の日本にはマンデル・フレミングの法則が妥当すると考えれば、財政支出でデフレは脱出できません。個人的には、飯田泰之さんがVoice誌2010年2月号で語っているように、社会保障の充実は景気対策としてやることじゃないと思う。(景気が回復しても予算を削らないわけだし)
好景気を支えるために必要な物価政策は、財政ではなく金融の担当。しかし日銀は動かない(再来年までデフレの持続を予測するという無責任ぶりである)わけだから、政府が金融政策をするしかない。
ここで重要なのは国民にとってどの政党が(誰が)政権を担当するかというより、(意外かも知れないが)政策の中身が基準になっているらしいこと。とにかく「国の借金」が最大の問題であり、これをきれいさっぱり解消してくれる者に託したいというのが国民マジョリティのホンネだと思う。ただしインフレにして蒸発させようなんていう「呪術」は認めませんよ、というところだろうなあ(リフレ実現への巨大な障壁。)。
引用部の最終文はよくわからない。国債が「蒸発」するようなインフレになったら経済の大混乱は避けられない。インフレそれ自体で国債残高の対GDP比を減らそうというのはリフレ政策反対派に目立つ誤解で、インフレになったら金利も上がるから意味がない、と言及するのが定番。
リフレ派の主張は、「+1~3%程度の緩やかな物価上昇率は景気拡大に有利な条件なので、物価の下落を止めて好景気を招来する→法人税・所得税の自然増収により国債残高の伸びをGDPの伸びより低くすることで、国債残高の対GDP比を抑制する」というものだと私は理解しています。
結局、私の意見は昨年と変わらない。政府貨幣で国債残高を減らすべし。日銀に国債償還用の口座を作って1兆円玉をたくさん預け入れ、物価を注視しながら償還期限の来た国債をどんどん償還していく(借款債を発行しない)。物価上昇率が+1%を安定して超えるまで、延々と国債の償還を続け、+3%に迫ったら終了する。
突然、貨幣の流通速度が急激に上がって大インフレになる、という可能性はゼロではないけれど、リスクのない政策はない。デフレを放置するよりはいい。それに国債残高が減れば、国民の将来不安が小さくなり、消費が増えて好景気になると思う。
事業仕分けでほとんどお金が出てこなかったから、国債発行44兆円と92兆円の予算、37兆円の税収見込みは整合しない。政府貨幣の活用という議論が出るか? と期待したんだけど、野党時代に一蹴したように、選択肢にもならなかった。税収不足分は特別会計の剰余金を取り崩すそう。
正月の産経新聞で、主要企業106社へのアンケートで、鳩山政権に期待する「景気対策」として最も支持を集めたのが「成長性の高い産業の育成」だった。歴史に学べば成功例の乏しさは明らかなのに、テレビの街頭インタビューでも「成長戦略」とやらを求める人が多い。なんでだろう。とはいうものの。
環境問題に政府がお金を出す件については、単純に産業政策批判で論破することは難しいと思う。環境対策には外部経済性があるのに、市場価格にはうまく反映されない。だから政府が支援する、という理屈がありますから。