趣味Web 小説 2010-01-15

今後、大学進学率は下がるだろうか?

1996年に書かれた21世紀の経済トレンド予測。「資源価格が高騰する」「環境が高価な資産になる」「大都市の価値が上がる」「大学進学率が下がる」「有名人経済になる」……これはアメリカの話だけれども、今のところ4つは概ね当たっていて(5大トレンドとして取り上げるのがふさわしいほどの変化かどうかは保留)、唯一、「大学進学率が下がる」だけが逆の傾向にある。

進学率が上がると、能力が同じでも低学歴はとても不利になる。だから進学率が上がる。ますます低学歴は不利になる。結果、コモディティ化した高等教育は事実上の義務教育となってしまう。……このサイクルは強い。従来は半年の職業訓練で現場に出られた技能職が、どんどん4年制大学を卒業して現場に出る職種へと変化しつつあるのだから、状況はもはや末期的だと思う。

経済学的な損得をいえば、早く就労できれば生涯所得が増えるし、学費も安い方がいいに決まってる。ところが、高等教育を本来は必要としない多くの職種が「大卒のみ採用」となると、プライドの問題が出てくるんだろうな。それで、職業訓練課程を充実させて4年制大学のカリキュラムにしてしまった方が、優秀な希望者を集めやすくなる。

私は進学率の青天井の上昇は「市場の失敗」によるものなので、政府の介入(=規制の導入)が検討されていいと思う。ただ、不景気で人余りの時期に若年労働者を増やす改革をすると、若年失業者が増えてしまう。また国民には不評の政策となるから、実現可能性はゼロかな。

教育費って医療費と似ていて、経済合理性が他のあれこれに負けちゃう分野なんだよね。医療費の場合、ほんのちょっとでも効果が改善された治療法や薬がある場合、人間の生命に極めて大きな価値があるものだから、「その性能差でこの価格差は不合理」という判断が、まず成立しない。あれもこれも保険適用にしろ、という国民の強大な圧力が政府に襲い掛かる。で、保険が大赤字になっていく。

保険が破綻したらみんな困るのに、国民は自重しない。進学率上昇による教育費の高騰にはそのような国家レベルの破綻が見えていないから、なおのことどうにもならないんだろうな。私は、進学率を劇的に下げて奨学金を充実する方がいいと思っているんだけど。

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