趣味Web 小説 2010-03-02

津波と瀬戸大橋、そして相手の言い分を聞くこと

先月末、チリで大地震があり、1日かけて日本に1m程度の津波が押し寄せるという出来事があった。気象庁が最大3mの津波を予想して太平洋側を中心に各地に津波警報を出した。それで電車が止まったり、イベントが中止になったり、逆に「問題ない」と予定通りにイベントを開催して論議を巻き起こしたりした。

文筆業の坪田知己さんが、twitterで私怨じゃないけど、津波警報を金科玉条に電車を止めるJRはアホじゃないかと思う。危険度と乗客の生活、仕事のバランスを考えるべき。田舎だから許されると思っている野k、東京だと訴えられるよホントに。私のホテル代、返せーーーーーーっ!!呟いて、多くの批判を浴びたのだという。

私も九十九式の記事を読んだ段階では「みんながそんなことをいったら、防災も気象予報も成り立たないじゃないか」と素朴に思ったのだけれど、後日に坪田さんが補足された内容を読んで、少し印象は変わった。

JR四国は、高知県に津波警報が出てるので、運休にしたのでしょうが、高知から岡山は太平洋には面してなくて、瀬戸大橋もかなり高いところにあるのですから、津波の影響はないはず。それを止める判断はちょっとやりすぎと思いました。

なるほどね。たしかに瀬戸大橋の橋げたは海面から50m以上の高さの位置にあって、下界が津波に飲み込まれても電車が運行するのに不安はなさそうです。ちなみに高速バスは当然のように通常運行だったのだけれど、満員で乗れなかったのだそう。なんでこれで電車が止まるんだ、おかしいだろ、という気持ちはよくわかる。

もっとも、それでもJRが運行を止めた理由は想像できます。山手線のどこかで「線路への立ち入り」が起きると、環状線だから、一周の反対側でも電車が止まってしまう。

そしてじつは、電車というのは、環状線でなくとも、どこかで止まると、広範囲で麻痺しやすい。とくに田舎暮らしをしたことのある人は経験があるのではないかと思うけれど、電車で2時間弱の距離の場所で発生した問題のために電車が止まることは珍しくない。鉄道会社は限られた線路にたくさんの列車を同時に走らせているので、遠くで電車が止まると、連鎖的にその影響が波及していく。

坪田さんとしては、「瀬戸大橋だけピストン輸送してくれたらそれでよかったのに」ということかもしれないけれど、電車が高いところを走っているのは橋の上だけ。香川側の宇達駅、坂出駅も、岡山側の児島駅も海沿いの低地にある。香川県はたしか大丈夫だったけど、岡山県には警報が出ていたと記憶しているので、JRが運休したのは正しい判断だったと思う。いざというときの柔軟な対応力は、バスと電車ではかなり差がありそうなので。

個人的には、坪田さん叩きを見るのは「つらいな」という感覚がある。あの橋の上を走る電車を見たことがある人なら、「津波警報でアレが止まるの?」という疑問を持つ人がいることは、理解できるんじゃないか。共感や賛同までは求めていない。理解はできるでしょ、と。

私は、理解できた。できたから、怖いな、と思った。きっと私もこういう「間違い」をする。いや、今すぐピッタリの思い出話を引っ張ってくることはできないけれど、私も同じような「間違い」をして、全然、言い分を聞いてもらえないまま一方的に非難されて、悲しい思いをたくさんしてきたはずなんだ。

「たしかに、橋の上を走っている分には、電車は安全でしょうね」と、その一点だけでいいと思う。まず相手の言い分を聞ける人に、私はなりたい。

ふと思ったこと

瀬戸大橋をタクシーで渡ると、いくらくらいになるのだろう。泊まった方が安かったりするのだろうか。

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