趣味Web 小説 2010-03-14

「それでも辞める」理由、私が残る理由

私はいまの勤務先について、「かなり理想的な職場です」と繰り返し書いてきました。労働者の権利がきちんと守られていて、健康を害するような長時間労働、希望に反する異動・勤務地変更はない。失敗した人を怒鳴りつけるような社員が(ほぼ)いない。一般社員が荷物を運んでいれば、社長が廊下を譲る、そんな会社。

それでも、毎年、辞めていく人がいます。ただし同業他社と比較しても特段の差異はなく、「若い社員ほど出入りが激しい」という一般的な傾向の範囲内のようです。逆にいえば、「こんなにいい会社でも、とくに若い人を引き止める力がない」わけです。

先月、6人しかいない私の所属部署から1人が辞めるということを知って、驚きました。市役所職員に転職されるのだという。私の前年に入社された方で、

  1. 入社してからの9年間で4度の最終赤字。定年までの会社の存続に不安がある。
  2. 入社後に結婚した奥さんが勤務地固定の「レア職」なので、自分も勤務地固定の仕事に就きたい。
  3. 友人・知人と比較して給料が少ない気がする。

といった理由で転職を決めたそう。2番目の理由を補足すると、同僚氏は自分を「平凡なサラリーマン」と認識しており、奥さんの「希少な仕事」を優先するべき、と考えています。だから東京から栃木への職場移動にはついていかず、部署を移って東京本社で働き続けるつもりでした。もちろん、私の勤務先はそれが許される会社なんだけれども、そもそも勤務地変更の打診がなければ、それを断る心労もないわけです。

私にとっても、理由1は切実です。けれども、私には理由2と理由3はない。私の社外の知人の多くは、零細企業の社員、派遣、フリーター。だから主観的に私の年収は「かなりよい方」。それに、過去のあちこちでのアルバイト体験から推察するに、現在の職場ほど居心地のいいところは滅多にないと断言できます。だから、会社の存続のため、可能な限りの努力をしたい。

職場の誰が既婚者なのか、みんなちゃんと把握していないというくらい、お互いプライベートに踏み込まず、それでいて「家族の急病」などには優しい。こんな人たちが集まっている会社に、再び運よく巡り合うことができるとは、とても思えない。

でも、「この会社では俺の能力を十分に伸ばせない」「給料が少な過ぎる」などといって、同期や同僚はポコポコ抜けていきました。研究や開発の部署にいたから、客観的に能力の高い人が多かったという事情もあるとは思う。しかしその後、みんな幸せにやっているのでしょうか。給料が安くても残っていればよかった、と後悔していないか。

これまでに転職された方とは「それっきり」になっているのだけれども、今度お辞めになる同僚氏とは、今後も交流が続きそう。1年後、2年後にまたお話を伺いたいと思う。

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