趣味Web 小説 2010-06-16

理解と共感

1.

津波と瀬戸大橋、そして相手の言い分を聞くこと(2010-03-02)
個人的には、坪田さん叩きを見るのは「つらいな」という感覚がある。あの橋の上を走る電車を見たことがある人なら、「津波警報でアレが止まるの?」という疑問を持つ人がいることは、理解できるんじゃないか。共感や賛同までは求めていない。理解はできるでしょ、と。
私は、理解できた。できたから、怖いな、と思った。(後文省略)

言葉の使い方がをかしいよ。 「津波警報でアレが止まるの?」には感情的(感覚的)に共感を覚える。 しかし、筋の通った理屈としては理解出来ない。 ──こういう事じゃないの? 感情的な話だからこそ「怖いな」という「感想」があり得る。 もう少し分かり易く言うと、感情(感覚や見た目の印象など)に対しては共感、筋の通った理屈に対しては理解を使います。

徳保さんの言葉の用法には、意識して居るのか無意識なのか分かりませんが、俺様流が散見される。 厳格である必要は無いけれど、だからと言って、俺様に都合の良い使い方は拙い。 「共感しろとは言わないけれど、理解しろ」。 これは理屈が通って居る場合に使う。 要するに、俺の主張は正しいと云う事を述べるケースです。 ゆえに感情的な共感を得る必要はありません。 たまにミスがあるのは已むを得ないけれども、断りなしに、または、無意識に、本来とは違う意味で使うのは良くない。

例えば、道を歩いていたら、車に撥ねられた猫の死骸に出くわしたとしましょうか。そのとき、「目障りだ」と思う人もいれば、「かわいそうに」と思う人もいるでしょう。人がそれぞれの感情を持つことを、私は「理解」します。しかし、私が「共感」するのは「かわいそうに」の方だけです。

2.

ある話題について百家争鳴の状態になっているとき、「まあ、そういう考え方もあるよね」と「理解」できる意見はたくさんあるでしょうが、自分が「全くその通りだなあ」と「共感」できる意見は、ほんの少ししかないことが多いと思う。

私は上記のように「理解」と「共感」を使い分けているのだけれども、これは辞書に記された語義とも整合的ではないでしょうか。

人にはそれぞれ事情があり、思考の前提条件が異なっています。だから、それぞれの人にとって「理屈の通った意見」があるわけです。「あの人は、Aという前提を持っていて、価値観Bを大切にしているから、結論はCになる、と。なるほど、と思います」……これって、「理解」じゃないですか?

あるいは、子どもに算数を教えているとき、どうして子どもが計算を間違えたのか、「理解」できることって、あるでしょう。子どもがどんな誤解をしていたかがわかると、「ああ、そうか、なるほどね」と納得できるわけです。でも、自分はそういう誤解をしないし、過去にも同様の経験がないとすれば、「共感」はできない。自分の中に、その子どもと共通するものがないわけだから。

たいてい、人のいうことは、論理は正しい。が、前提は怪しい。だから、議論になったときは、まず「相手と自分の前提が違うのではないか?」と考えた方がいい。「前提は同じはず」と決め付けて、「それなのに結論が違うということは……論理が間違っているんだ!」といって攻撃を始めると、紛糾することになる。経験的に、私はそのように認識しています。

さて、三宅さんは、「理屈が通っている=正しい」という前提を置いているようです。私は、その点に異論があるのです。理屈の通った、間違った意見はいくらでもあるでしょう、と。

一方、気持ちの問題について、三宅さんは、「人は他人と交感できる」という前提を置いているようです。私は、「自分はこう思う、こう感じる」という気持ちは、個性と結びついたものであって、そうそう他人と同じような気持ちになるわけがない、と考えています。だから、「共感」なんてのは、まず成立しない、と。

3.

もともとの話題に即していえば、「坪田さんは、論理展開を間違ったのではなく、前提知識に誤りがあったのだ」と私はみなしているのです。だから、坪田さんの考え方は「理解」できるけれども、私は賛成しない。また、坪田さんの価値判断にも同意できない点は多く、私が「共感」できる部分もほとんどない。私は、そう考えるんですね。

しかし三宅さんは、こう考える。坪田さんの主張は誤りだった。それは理が通っていなかったということだ(たぶん三宅さんは前提条件の間違いも「理」の内に含めるのだと思う)。だから坪田さんの主張を「理解」することはできない。しかし電車が止まって苛立った坪田さんの気持ちには、例えあなたが「津波がきているときに電車が止まるのは当然。苛立つようなことじゃない」と思うタイプの人だったとしても、「共感」することができるんじゃないか。

さて、あらためて辞書の語義説明と比較対照してみると、三宅さんの方が、言葉の用法に独自性が出ているように見えます。

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