経営の傾いた準大手の出版社があって、希望退職に応募した「たぬきち」さんが社員生活を振り返るブログをはじめたら、大きな反響を呼んだのだという。7月末にブログが書籍になることを6月上旬に告知したら、コメントの著作権の扱いをめぐって批判が殺到することに。いまはもう落ち着いているみたい。
コメントの著作権については脇において、少し別の話をしたい。
今のエンドユーザーは非常にレベルが高いので、ちょっと嘘を書いたらすぐ見破られてしまいます。すごくたくさんのコンテンツに触れているから、見抜く力がすごいんです。
別にそんなことはないと思うけど。せっかく匿名でやっているのに、そんな窮屈な枠を作らなくたっていいだろうに。ちなみに私の日記には、適当に創作が混じってますよ。そのつもりで読んでください。いちいち書かれていることが全部「真実」だとか、思わないでほしい。
ていうか、「本当の話」なら面白いけど、「創作」ならつまらない、って、私にはよくわからない感覚。どうせ他人事じゃないか。そこにどんな差があるっていうの? まあ、私の文章が全部「本当」じゃないと面白くないという人は、私がさっき「創作も混じってますよ」と書いたのが「嘘」だということにすればいいんじゃないの。
それ以上に謎なのが、「出版社が希望退職を募って応じた中年男性の語」が、なぜ書籍にするだけのコンテンツと看做されるのか、ということだ。だいたい中小の出版社はいくつも潰れているのも周知の通りだし、編集プロダクションや個人ライターが収入を得るのに厳しさを増していることも今にはじまったことではない。
そんな理屈が通るなら、書店に並んでいる本の大半は商業的な価値を持たないことになります。でも実際は、それぞれ、それなりに売れているわけでしょう。
たぬきちさんの日記は、当のParsleyさんを含めて数万人の耳目を集めて、3月末からの4ヶ月で150万PV以上という結果を出しました。ウェブ上でも、ちゃんと需要があったということですよね。「1億2千万人強の日本人のうち、1万人くらいは興味を持つ本にはなりそうだな」と出版社の人が思うことに、私は疑問を感じないな。そりゃたしかに、「99%の国民にとっては、どうでもいい話だよな」とは思うけれども。
新潮社が思い切って1.8万部も刷ってくれたので、コメント部分の印税額は約64万円にもなったとのこと。
サラッと読んだ限り、個人的には、コメントは不要ではないかと思った。無駄な騒ぎだったんじゃないか。どうしても必要なコメントがあるなら、いくらか追記して「引用」すれば十分だったように見える。