趣味Web 小説 2010-07-27

家は買うのが得か、借りるのが得か。

1.

「家は買うのが得か、借りるのが得か」という話題は、はてブ界隈では繰り返し注目を集めています。

k atakaさんが、不動産価値の目減り、保全費用、固定資産税、頭金の運用益、利払い費を考慮して試算したことろ、買っても借りても大差ない(残された不動産価値相当の現預金が手もとに残る)という結果になったそう。

素朴にいって、家を買うか借りるかで圧倒的なコスト差があれば、必ず裁定取引が行われるはず。長期的には、そのコスト差は消えます。なので、家を買っても借りても、コストに大差がないのは当たり前の話。……というのは、経済学の入門書に書いてあることですが、人に話してすんなり納得されたことは、あまりない。

不動産は流動性が低いので、個別の具体例については、かなりのコスト差が観察されることもあると思う。そしてマクロの理屈より、ミクロの観察体験の方を世界認識の基礎とする人が多いわけから、それも仕方のないことかな。

ところで、k atakaさんの試算では、頭金の運用利率と住宅ローンの利率が0.2%しか違わない。だから頭金とローンのバランスを変えても、結論がほとんど動かない。これは少々特異な前提だと思う。

(k atakaさんの前提は近年の状況を反映したもの。20年近い日銀の金融失政は事実だが、「銀行がまじめに住宅ローン事業をやって地価変動や不況に脅えても、国債との金利差は0.2%ぽっち」なんて異常事態が今後20年も続くと仮定するのは疑問。「失われた40年」……)

2.

矛盾したことをいうようだけれども、そもそも論をいえば、大家が寄生している以上、賃貸は分譲より高いに決まっています。ところが、その価格差が「納税や管理の外注費」として受け入れられることはなく、日本の賃貸市場には、分譲との価格差をゼロにしようとする圧力がかかっています。大家側の対抗策は二つ。

ひとつは、大家が無借金で賃貸物件をはじめること。通常、住宅ローンの金利は頭金の運用利率よりかなり高い。ライバルの分譲物件の実質価格はローン金利込み。だから家賃をそれと同等に設定すれば、銀行の利潤に相当する額が、大家の利潤になります。

もうひとつは、物件のグレードを落とすこと。「立地・間取り・見た目」でごまかして、壁や床をケチる。大半の大家は借金して賃貸を始めるので、これしか手がない。多くの消費者が「大家の仕事」に適正な支払いをする意思を持たない限り、日本の賃貸物件の悲惨さは改善されません。いつまでも。

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