リンク先とは関係ないのだけれども、あちこちでよく見かける、「福祉は安定財源で」という主張には疑問があります。
「安定した福祉+景気によって増減する直接税中心の税制」の方が、優れていると思う。1~3兆円程度の減税や給付金だけで国会は大騒ぎになりますが、法人税や所得税なら、景気の悪化に対応して即座に10兆円を超える規模の減税を実現します。逆にバブル景気ともなれば、スルスルと税収は伸びていく。
景気対策のスピード感を問題視するなら、いちいち国会で議論したり、大臣が決断したりする必要がなく、自動的に効力を発揮する制度を予め用意しておくのがいちばんよい。
福祉予算を消費税とセットにしたがるのは、福祉を財政再建論議から切り離したい人々。効果的な戦略だと思う。たしかに「福祉予算を聖域化するな」という声は鎮まっていない。むしろ高まりを見せつつあるのではないか。危機感を持つのは分かります。
ですが、異論の持ち主の説得を放棄して、あるいは持論の正しさを自明視して、「バカの攻撃から制度の壁で福祉予算を守るんだ」という方向を目指すのは感心できません。端的にいえば、独善的です。「正しい独裁」ないし「正しい既得権益」を認める発想でしょう。
……とはいえ、かくいう私も、理想を掲げて作られた法律によって、守られてきた一人です。言論の自由など、実際のところ、世間の多数派はそれほど尊重していない。人が生きる権利すら。推定無罪も何のその、いざ冤罪が明らかになっても「警察が悪い」「マスコミが悪い」みんな他人のせい。
人権派の不満はよくわかる一方、「これでも日本政府は暴虐な世論によく抵抗している」と私は思うようになりました。福祉を消費税とセットにすることだけを、問題視するのはおかしい。
だけど、それでも、やはり基本的には、政府と民意は寄り添うべき。制度・法律の壁で民意に抗する領域は狭い方がよい。世論に簡単に左右されない制度を民主的に構築し、独善に陥ることなく民意とのバランスを保ちながら修正していくのは、とても難しいことです。
「筋」が通っているのはbewaadさんの方だと思う一方、世論のうねりを捉えた小泉純一郎総理(当時)の発言を簡単に切り捨てるところに、陥穽があるとも感じます。
制度というのは、なかなか変えられない。民意と大きくズレてしまってさえ、修正は難しい。制度のダムに世の人々の憤懣が積み上がっていく。けれども、そもそも簡単に世論に左右されないために特別会計などの制度は作られるのだから、この問題は最初から内包されています。
現行の制度に問題があるなら、それを廃止して新しい制度を作るべき。それ自体は正論だけれども「制度の強度と世論とのズレのバランス」への配慮を欠いています。道路特定財源という制度が、他の制度と一律に頑健であることに、多くの人々は怒ったのだと思う。小泉さんは、このジレンマに対して「道路特定財源に関しては制度をちょろまかす」という解決策を提示したわけです。
筋を枉げてなし崩し的に制度を変更するのは、ヤバイ。けれども、小泉発言を単に「意味不明」と評したのでは欠落する部分があると思います。