趣味Web 小説 2010-08-17

サラ金業者が目指したブルー・オーシャン

1.

個人が使える、最も低利のローンのひとつ。事前申込不要で、完全に自動で発動するのだから、これほど手間要らずの仕組みもない。実質年利は0.25%と低く、サラ金はおろかクレジットカード会社のカードローンとも比較にならない水準だ。

最初に自分が必要とする大きさの定額貯金を用意しなければならないが、それさえ済んでしまえば、カードの分割払いやリボ払い(実質年率10~18%)など、あまりにもバカらしい。カードの引落し口座をゆうちょ銀行に設定すれば、カードは1回払い以外、考えなくてよい。

2.

サラ金やカードローンは、収入・支出の片方または両方に波があり、一時的な赤字が生じる場合に利用される。「利用者の大半が、長期的には収入が支出を金利分以上に上回る」見込みがあればこそ、融資事業が成り立つ。無審査ではその見込みが立たないため、何らかの審査は欠かせない。

だが、長期の高額融資と比べて、短期の小額融資の審査は相当に簡素化できる。ここに消費者の大きな需要があった。そこでサラ金各社は法定金利の上限付近に張り付いて、審査の簡単さを競い合うことになった。結果、2種類あった法定金利の中間で競争が行われ、グレーゾーン金利問題が生まれることになる。

しかし「多少、審査が厳しくてもいいから、少しでも低利の方がいい」という消費者も少なからず存在したのだから、サラ金同士の金利競争は、もっと活発になってもよかったはずだ。そうならなかったのは、金利競争の苛烈さ故だろう。

ゆうちょ銀行の貯金担保自動貸付けは凄まじい商品であり、最初のひと手間の先は、何の面倒もなく実質年利0.25%の小額融資を受けることができてしまう。カードローンも、最初に信用調査を行うため、実際の利用時にはカード1枚で年率5%程度で融資を受けられる商品が存在する。とすると、サラ金の利便性というのは「飛び込みで利用できる」ことの他に見当たらない。金利競争で血を吐いても、ていねいな信用調査を欠く以上、ライバルに太刀打ちはできる数字にはならない。

営利企業は、当然、より大きな利潤を得られそうな道を進もうとする。サラ金業者は「粗利はいいが、高いリスクを抱え、営業経費もかかる」という方向性を選択した。

結局はこれも消耗戦になっていったのだが、絶対に勝ち目のない敵が先に待つ金利競争よりは、夢や希望を持つことができたのではないか。実際、グレーゾーン金利問題で過去に遡って採算ラインを人為的に変更されてしまうまでは、(一時的であれ)大きな利潤を上げることができていた。

3.

クレジットカードの分割払い、リボ払いも、収支の不整合を均す、サラ金と競合する商品だ。調べてみてギョッとしたのが、その利率。年利10~18%程度というのでは、サラ金と同等ではないか。

分割払いやリボ払いを利用している人がどれだけいるのかよく知らないのだけれども、個人的に連想したのはアニメ産業。たった数千人がDVDやBDを買ってくれるおかげで、百万人単位の人々が無料で「広告」としてのテレビ放送を視聴できている、というアレ。

年会費無料+1回払いのみの利用という多数派には利益だけあって、一部の人がせっせとカード会社を儲けさせているんじゃないか……。クレジットカード会社の利益構造について書かれた本は読んだことがないので、空想に過ぎないのだが。

補記:

この記事の趣旨は、どの金融機関も欲している低リスク顧客の獲得競争において、サラ金がいかなる戦略を採用したか、というものです。サラ金以外に貸し手のない高リスク顧客は考察の対象としておりません。

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