飲めない事をただ強調するんじゃなくてキチンと理由まで説明すべきだと思うな。学生じゃなくて社会人だし、職場のコミュニケーションて大切なことだよ。お金貰ってるから仕事だけしてればいいってもんじゃないよ。
とりあえず、話題になったひとつの発言だけについていうならば、私は大筋でKanoさんに賛同します。
はてブやtwitterでこの話題に関心のある方々の感覚では、「飲めない」人は単に「飲めない」とだけ主張すればよく、それ以上の説明を求めるのはアルコールハラスメントなのだそう。私は、そうは思わない。「飲めない」理由はいろいろあります。その理由次第で、周囲の対応も変わってきます。
「今日は車を運転する用事があるので飲めません」
「飲み会が終るのって、午後7時過ぎでしょ。そんな遅くにどこへ出かけるの?」
「流し用の洗剤を買ってきてって頼まれてまして。残業続きで面倒くさがってたら、今日もサボったら食事抜きだ、っていわれちゃって。でも田んぼの真ん中にある家なんで、夜の遅い時間に、歩いていけるような距離の場所で適当な店がないんですよ」
「奥さんも忙しい人なんだよね、たしか。ところで、うちの職場の流しにある洗剤、あれ私物だからあげるよ。洗剤の種類にこだわりがなければ、アレでいいと思うんだけど」
「えっ、本当ですか! ありがとうございます」
「毎週、金曜日は休肝日にしているんです」
「1日ずらせないの?」
「こういうことは、なあなあにすると崩れてしまうので」
「じゃあ、今日はしょうがないけど、次は金曜日以外にしようかな。それなら大丈夫? それとも、あえて飲み会の多い金曜日を休肝日に設定しているとか?」
「じつはそうなんです」
「了解しました」
「いま飲んでる薬が、アルコールはダメってことで」
「その治療、どれくらい続くの?」
「とりあえず3ヶ月は続くみたいです」
「それはたいへんだ……。で、お酒はともかくとしてさ、他に、どうなの、仕事でこれはつらいとかある?」
「今週はずっと風邪気味で、風邪薬を飲んでいまして……」
「風邪を酒で治すってのは俗説らしいですから、たしかに飲まない方がいいでしょうね。というか、飲み会に出て大丈夫なんですか?」
「ちゃんと仕事はできていますし、食欲もあります。夕飯だけ無理ということはないと思います」
「わかりました。でも人ごみは身体によくないでしょうし、無理はしないでください」
「そんなにひどかったら、ちゃんと会社を休みますよ。風邪をうつしたらもっと迷惑ですし(笑)」
「俺、酒が嫌いでね。わざわざ参加費を払って嫌な思いをしたくないじゃん?」
「それはそうですよね。ただ、今のところビール以外は**さんのウーロン茶ひとつしか注文していませんので、今日は形式的に乾杯だけはビールでやってもらっていいですか? もちろん口をつける必要はありません」
「了解、了解」
「えーと、次から最初の1杯は、とりあえずウーロン茶でよろしいですか? とくにご希望があればメモしておきますが」
「いや、ウーロン茶でいいよ。ウーロン茶なら、どこの店にもあるからね」
「私は、お酒が全くダメでして」
「体質の問題? それとも宗教? ともかく、一時的な病気とかではない、という風に考えていい?」
「はい、体質的にダメなんです。本当に少しでもダメなので、乾杯の1杯も遠慮させてください」
「わかりました。じゃあ、最初に自己紹介の時間を作るので、そのときに一言、その件について付け加えてくれるかな。お互い、楽しい時間を過ごすためには、こういうことを全員が知っていた方がいいので」
「わかりました」
「よろしくお願いします。ところで、乾杯はとりあえずウーロン茶でいい? 飲み放題のソフトドリンクのメニューはこれ。希望があれば早めにいってくれると助かります」
お酒が飲めないこと自体は、たしかに個人の問題なのだけれども、やっぱり周囲の人に何らかの影響はあるんです。それは学生とか仕事とか関係ない話であって。単に「私は飲めません」という結論を掲げるだけでも、「飲まない」という目的は実現できるでしょうが、よりていねいな説明があれば、お互い気持ちよく対応できると思うんです。
「何? 飲みたくない? 理由は何だ? 俺を納得させる説明をしてみろよ。え? どうした? よく聞こえないんだけどwww」みたいな人に対して、「飲めない人は単に「飲めない」とだけ主張すればいいのだ」と対抗するならわかるけれども、果たしてKanoさんはそういうタイプなんでしょうか。
職場の同僚なんかにプライバシーを話したくないよ、という考え方は理解できます。ただ、それならそれで、「私はそういう人間です」という説明はほしい。
おい、たった今、そういうのが嫌だといったばかりではないか。誰も他人のプライバシーに関心を持たず、お節介をしようとしない社会になればいいのに。どうして分かってくれないのか。……そういう気持ちは、わかるつもり。だけど、背負っている文化の違う者同士がひとつの社会で暮らすのだから、当面そこまでは「必要最小限」の範囲内とみなしてほしいと思います。
上に挙げた例の他には、「今日は飲む気分じゃない」「わかりました」という会話も、私には馴染みのもの。「最近、肌が荒れているから(今日は飲まない)」というのも、ありがち。
ところで、幹事だけが了解しても意味ないじゃないか、という疑問もあろうかと思いますが、これは簡単なんです。最初の乾杯の直後に「AさんとBさんは今日、ソフトドリンクですよね。ソフトドリンクの一覧はカタログのここに記載されています。Cさん、Dさん、Eさんにも順番に回してください」という。このAさん、Bさんは、ふだんは飲むけど今日は飲まない人。お酒を勧めるのが好きな人が勘違いしないように、AさんとBさんの名前を明瞭に伝達します。Cさん、Dさん、Eさんはいつも通りなので、強調しない。これは歴代の幹事が受け継いでいる技術です。
あと、会社でもときどき「食事会」はありますが、この記事では「飲み会」を例にしてます。過半の人が金額を気にせず飲みたい(会費を事前に設定してほしい)という希望を持っているので、「飲み会」になることが多いのが実情だからです。遅れてきたり、途中で帰る方も珍しくないので、定額制にして最初に集金する方が、幹事の負担が減って好都合なんです。多数派の勝手といえば、全くその通りなのですが。
「飲めない人」が空気を悪くするんじゃなくて、「飲めないひとに必要以上にこだわる人」が空気を悪くする。これは「面白いこといってよ」って言うやつがいちばん寒い空気を作るのと同じ。
問題は「必要以上」の線引き。私はKano発言批判の中にあった「飲めない理由を訊く=アルハラ」という主張には賛同しません。その質問が嫌な人の気持ちは分かりますが、「いいたくありません」「そう、嫌なこと訊いちゃってごめんなさい」で済むことですよね。「必要」ではなくとも、常識的なコミュニケーションの範囲内だと思う。「誰も傷つけない会話」しか認めない、といったら誰とも話せないと思う。