趣味Web 小説 2010-09-05

基礎所得制度について 1

1.

私は基礎所得制度に賛成ですが、自分の意見はもやもやしているので、いくつかの疑問に回答することで、ある程度まで考えを明確にしていきたい。とりあえず、strangeさんの疑問に取り組んでみます。

ベーシックインカムでよくわかんないことがあって、例えば1人毎月7万円(※以下7万円は全部例ね)を全国民に配ったとしてさ、それで物価が上がったりしないのん?

全国民に配分する基礎所得の財源は税金なので、世の中全体のお金の量には影響しません。

所得の再分配は現在も行われています。個別具体的な状況を切り取れば、分配の仕方によって経済は影響を受けるでしょう(富裕層向けの市場が縮小し、低所得者層向けの市場が拡大する、など)。しかし全体としては大きな変化はないと考えられます。

「貯蓄」がタンス預金なら、「貯蓄」が減って消費に回れば、物価が上昇します。しかし、利息がつくような貯蓄の場合、その裏には通常、投資が存在します。そうでなければ、銀行は倒産してしまう。貯蓄率の高低そのものは、物価上昇率に直結しません。

あるいは、現在は不況で生産能力が余っている状況なので、40~80兆円分くらい消費が増えても、一般的な物価が急上昇するとは考えにくい。

もちろん家計が消費する商品だけに注目すれば、一時的に価格が上がるでしょう(その裏で消費の減ったものの価格が下がる)。しかし、日本でちょっと消費が伸びたくらいで材料価格が上昇するわけはない。価格が上がれば新規参入や設備投資が盛んになり、競争が激化し、結局は元の価格に落ち着くと予想できます。

2.

行政は大幅に簡素化されるため、関連省庁や機関・人員も大幅に縮小・削減できる。雇用を生み出すだけが目的の、ムダな公共事業も不要になる。いうまでもないが、これらの財源がベーシック・インカムの原資に転換する。

(中略)なんかこういうの見てると、公務員の給料や公共事業からのもらっている給料を現状月何十万円からベーシックインカムだけの月7万円にして、その差額を国民全員に配ろうっていってるだけじゃないのかなあってきがしてくる。

まず公務員の給与はGDPの6%ちょいなので、人件費をゼロにしても財源たりえません。基礎所得の財源は、税金しかないはずです。

リハ医さんの主張には、私も賛成しません。基礎所得制度で行政を簡素化できるとは思えません。国民が、それを望んでいるようには見えないからです。所得再分配のやり方のひとつ、という以上の意味を持たせるのは難しいのではないでしょうか。

ただ「現金支給か実物支給か」というのは、よく議論されるところ。現金支給派は「理念を欠く」と批判されがちですが、「人々が真に望む世界へ最も効率的に接近する」ためには、使い道を国民に任せるのが一番いい、というのが理念なんです。特定の人の掲げる理想に国民をつきあわせるような政治はダメだ、と。でも各自が自分の「正しさ」に自信を持ち、他人の判断を尊重しないなら、現物支給の予算分捕り合戦は必然です。

本音と建前のズレが大きな社会では、現金支給は本音を、実物支給は建前を強調することになります。本音が前面に出た社会のあり方を「堕落」と解釈するなら、現金支給が嫌われるのも理解できます。逆に建前の押し付けに反発するなら、実物支給に不快感を示すことになるでしょう。

建前にも支持率の高低があって、公務員の給与水準や、高速道路の延伸工事などは、相当に支持を減らしているようですね。しかしそれらは建前の支持率争いで脱落しただけで、実物支給そのものに疑問を抱く意見は、日本ではあまり活発ではなさそうです。

個人的には、所得税の様々な控除のうち、人の生き方、消費の仕方を誘導するタイプの制度は、バッサリ落としてほしいと思う。でも、それがいちばん難しいのだろうな。

3.

つーかさ、基本的に再配分の仕組みをどんな風に変更しようが、どうかんがえても総額が足りないんだから、日本国外からいかに金を分捕ってくるか(適当な投資を呼び込むとかじゃなく再配分の仕組みを通して国民に再配布できる金をってことね)を真剣に考えないとダメなんじゃないかとおもうよ、おれは。政府系投資ファンドを作って海外で利益をあげてをベーシックインカムの原資にしたらどうかなあ。

現状でも、世の中の4割の人は賃金労働をしていません。でも、生きている。それは親が子を養うとか、年金とか、あと一部は生活保護などによるもの。だいたいそれでうまくいっている……といえば、まあそう。

だけど、「だいたい」からこぼれ落ちた人を「仕方ない」といったり、何かしら粗探しをして「当然だ」といって、痛みを我慢させる仕組みでいいのか? これが私の問題意識です。論者によって、基礎所得で解決したい問題はかなり違っていて、呉越同舟の感はあります。私は基礎所得制度を所得再分配の一方式と捉えているので、「総額は足りている」と考えます。

あと、政府系投資ファンドについては、「みんなのお金でリスクを取るのはおかしい。民間が自己責任でやるべきだ」と考えます。民間が儲けたお金を、所得税や消費税で吸い上げて、分配の原資とするのが正しい。それを遠回りに感じ、中抜きしたいと思うのは自然ですが、それは結局「儲かる会社を買って国営企業にすれば中抜きゼロだよね」という話に行き着いてしまう。

もっとも、年金基金などは昔から基金の一部を投資に回しているわけですが……。

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