私には「不特定多数には見てもらいたくないけれど、閲覧制限はかけない」というウェブサイトの運営方針が理解できないので、検索避けタカ派の来襲を防ぐ以外の検索避けのメリットが思い浮かばなかった。
私は逆に、どうしてえっけんさんがいつまで経っても「理解できない」のかがわからない。「検索避けの押し付け」を批判することと、「検索避け」をしたいと思う人の気持ちを理解することとは、切り離して考えることができるはずです。同意はしなくてもいいけど、理解はしていいと思う。
同人サイトをやっている人(の大半)は、自分自身が同人サイトの世界に出会うことができたのだから、「検索避けをしているサイトが権利者の方々に発見されることは絶対ない」とは考えていないはずです。
また実際に会員制のサイトをやってみればわかるけど、ふつう閲覧者は激減するわけです。pixivやmixiのようにインフラと化したコミュニティの中に入ることは、むしろ閲覧者を増やしたりもします。しかしmixiで閉鎖型のコミュニティを作ってみれば、あまりの反響のなさに驚くと思う。「全体に公開」「参加自由」でないと、なかなかコミュニティは成功しない。「マイミク限定」のコンテンツが大ブレイクしてマイミク申請が殺到するのは例外中の例外。mixiの中で「全体に公開」していないと、つまり敷居を低くしないと、大勢に読まれるのは難しい。(とくに「交流」の苦手な人はそう)
やっぱり、自分のコンテンツは、そこそこ大勢に見てほしいですよ。たまに人気が出すぎて隠れる人もいますが、大半は「もっと多くの人に見てもらいたい」と思っているのです。だから会員制にはできないのです。
検索避けは、意思表示です。「ふつうに作品名で検索しても、見つからないようにしています。一般的なファンの方のお目を汚すつもりは毛頭ございません」ということです。同人活動に理解のある人に向けて公開しているのです。興味のない方は、どうか内容に触れず立ち去ってほしい。そういう願いが、検索避けには表れています。
世の中にはヤクザみたいな因縁付けがいて、自分の気に食わないものが「目立っている」ことを攻撃するのです。「キモイ」「閉鎖しろ」みたいな書き込みは、絶えず行われています。それが多いか少ないかといえば、私の見るところ、ヘンな人に目を付けられてしまったケースを除けば、大した量ではない。でも、当人にとってはショックなことです。
そういうわけだから、会員制にはしないけれども、「目立たない」ようにしたい。いちゃもんをつけられる要素は排除したい。もちろん、コンテンツそのものは守らなきゃならない。
検索避けは、見た目に分かりやすい「世間様(ふつうに作品名を検索する人)に迷惑をかける意思はありません」という態度表明なんです。大した効力はない。それは実際に荒らしに遭遇した人ならわかる。でも、絶対にやりたくないことは除外して、「自分にできることは何か?」と考えると、選択肢はあまりない。
たいていのサイトは、ほとんどの期間、平穏に運営されるものです。検索避けなどという実効性の乏しい荒らし対策が滅びないのは、平和の裏返しだと思います。
嫌がらせ行為を受けないためには、検索避けをしておくに越したことはないのでは、と思うようになった。
何故なら、「検索避けが同人サイトのマナー」と信じる人の中には、ちょっとアタマがイカれちゃったひとも決して珍しくなく、検索避けをしていない同人サイトを探しては「なんで検索避けをしないのッ! 同人サイトの常識ですよッ! 晒されて荒らされて閉鎖に追い込まれますよッ!」と、執拗にアドバイスを書き込み、検索避けを強要する人がいるからだ。(自分が荒らし行為をしている、という自覚がないのが困ったところ)
馬鹿馬鹿しいな、と私も思う。こうなるともう、何のための検索避けなのか。
それでも、同人をやってる人の少なからずには、自分の創作活動が「見る人を傷つける」という自覚があります。同好の士なら喜んでくれるけれども、みんながそうではないことを知っている。ときどきであれ、決して忘れることのない頻度で、繰り返しその事実と向き合わされてきたんです。
高校時代、文藝部の先輩が「こんなん描いちゃいました。すみません、すみません」というのを聞いてジョークだと思ったのだけれど、間もなく、それは本気だったことを理解しました。「常識」の側に立つ者は、個人の不快感をこれほどまでに尊大な態度で表明できるのか、という現場を見せつけられたのです。他人の趣味なんか、どうだっていいだろうに……。でも私は、ただ黙っていた。まあ卑怯者です。
生涯に一度だって、こんな経験をすれば、「思い知る」には十分です。しかし実際には部活が一緒だっただけの私ですら、数回、現場に遭遇しました。同人界隈で、「目立たない」ことがマナーとして定着したのは、自然なことだと思います。必死な人には、何か嫌な思い出があるのですよ、たぶん。