趣味Web 小説 2010-09-19

ハーバード白熱教室ノートの欄外:前提のズレた批判

1.

先月の末に公開し、その後もちょこちょこ手を加えたもの。主にtwitter方面で多くの反応があった。『ハーバード白熱教室』の話題が再燃するたびにページビューが出たのだけれども、作り手の伝えたいことは伝わらないものだな、という思いを新たにした。

2.

当該記事は消えてしまったのだけれども、私がコメントしたという記録だけは残っていて、t-hirosakaさんが新しい記事を立てるたびブログ検索でエゴサーチした結果のRSSに引っかかってくる。記事が消えたら「最近のコメント」も消える方が自然なように思うが、はてなダイアリーの仕様はそうなっていないらしい。いったんt-hirosakaさんが何か返信コメントを書かれたようだが、私がそれを読む前に記事が消えてしまい、「返信コメントがあった」ことだけ表示されている。もやもやする。

消えた記事の内容は引用しないが、以下に転載する私のコメントから、おおよその推測は可能だろうと思う。

中の人の1人です。この診断は、『ハーバード白熱教室』の入門ガイドである無料の電子書籍『セイギのつくり方。』を興味を持って読んでいただくための仕掛けとして作成したものであって、この診断そのものにはそれ以上の意味がありません。サンデル先生の講義において、それぞれの立場の代表として登場した方々のうち、まず1人について興味を持っていただこう、という意図です。いきなり9人全員の意見や立場を勉強していただこうとしても厳しいので、全54ページのうち5ページくらいを、まず読んでほしい。

診断チャートの最初のページにも、結果一覧のページにも目立つ位置にそういう意味のことを書いているつもりなのですが、なかなか読まれません。あと、サンデル先生の講義をテレビで見るまで、そこに登場した政治哲学者の名前をひとつも知らなかったような方を想定して活動をしているのですが、反応してくださるのは私どもよりよほど哲学に詳しい方が多い。ならば親が子を見るように、こちらの意図を汲んでいただけるかというと、そうではなくて、診断チャート単体で完成されたコンテンツとみなしてダメ出しを下さる。あちこちからいろいろ反響をいただいているのですが、正直なところ困惑しております。

念のために補足しますと、『ハーバード白熱教室』にはフーコーもハーバーマスもアーレントもマルクーゼも登場しません。書籍版にも登場していないのです。ですから、番組のガイドブックである『セイギのつくり方。』が彼らを取り上げることはありえないし、当然、その導入部である第1章をウェブに移植した診断チャートウェブ版にも登場しないのは道理だ、とご理解いただきたい。愛想とかそういう問題ではないです。それでも取り上げるべきだと仰るなら、まずサンデル教授に対して、全12回の講義、400ページ近い本の中にすら彼らが登場しないのはおかしいじゃないか、といってほしいです。

それはともかくとしても、そもそも「政治哲学者」の診断チャートであるわけで、高々10程度の分類をする中にフーコーとマルクーゼを取り上げて位置づけるのは難しいと思いますが、いかがでしょうか。ハーバーマスとアーレントは納得もできますけれども。

3.

twitterで簡単に否定してくれる方々にいちいち説明するのは面倒が勝つので避けていたが、鬱憤は溜まっていた。t-hirosakaさんのブログを大勢が読んでいる様子はなく、たまたま長文で批判してくれたに過ぎないt-hirosakaさんのところのコメント欄に記事本文に迫る長さのコメントをしたって、状況は何も変わらない。

しかし現状でも、いちばん目立つ位置に必要な説明はあるのであって、これ以上はどうにもならないと思う。不愉快なことだが、場面が変われば私も「勝手な思い込みを前提として意見して相手を困惑させる」ことをやってきたわけなので、お互い様ではある。だから我慢する、ということではない。もっと別の折り合いのつけ方があるのではないか。

私の場合、「作者の意図は理解しました。**ということですよね。だけど私は、これは**としても有意義だと思っていて、その場合、**のようにすると、完成度がグンと上がるし、そのようにしても当初の意図には反しないはずです」といった意見は、好ましく思う。あるいは、「作者の意図からは外れるけれども、**という応用形態も考えることができるのではないか。その場合、ここは**した方がよい」といった提案も、大歓迎だったりする。

人それぞれ思うことは違っていい。ただ、作者の意図は無視してほしくない。まず理解してほしい。とくに前提を示さない批判が成り立つのは、作者の意図を汲んでいる場合だけではないか。作者とは別の前提に基づく批判なら、まずその点を自覚していることを判読できるモノの言い方を選択してほしい。

……といっても、批判はいつも思わぬ人から飛んでくるものなので、まあ、仕方ない。なので、これはもっぱら自戒としたい。まず自分が、批判の前提を明らかにしていくよう気をつけていこうじゃないか、と。

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