私は過去に「報道されてない、っていうけど、されている。テレビやネットのニュースしか見てない人はバカ。有料の紙の新聞に目を通せ」という内容の記事を何度も書いてきたが、これは本当に報道されなかったケース。
10月に元航空幕僚長の田母神俊雄さんが主導して行ったデモについて、海外メディアだけが報道して、日本のメディアは報道しなかったことが、ネットの一部で話題になった。これは「私」と「国内マスコミの客層」と「CNN視聴者」それぞれにとってのニュース価値のズレが招いたことだといっていいと思う。
日本国内で、本当に田母神さんのデモ活動に大きなニュースバリューがあるのなら、後追い報道がワッと出てくるし、次のデモには記者やカメラが殺到するだろう。マスコミも商売なので、客のほしがるニュースを取材して報道するのだ。かといって、これから起きる出来事について、事前にアンケートをとるわけにもいかないので、経験的に反響の大きな話題に関する出来事をなるべく見逃さないよう、準備をしている。
もちろん、そうした予測・準備から漏れてしまう話題は多々ある。今年の事例だと「行方不明高齢者」「戸籍上の生存」などは、まさに「長らくマスコミではあまり報じられることがなかったが、じつは大きな報道価値があった話題」だろう。たしかにそういう話題には事欠かない。
が、尖閣デモ報道は、1ヶ月半余りが経過した今、盛り上がりをまったく欠いている。ネット上ですらそうなのだ。田母神さんらは、週末毎に政府への抗議活動を行い、11月に入って以降も大規模なデモを行っている。が、産経系ニュースメディアですら、さしたる扱いはしていない。購読者の関心・反響がいまひとつで、特別に紙面と人員を割くだけの経済的理由を見出せなかったのだろうと思う。
本当に購読者の関心を集める話題の場合、最初は小さな記事だったものが、どんどん大きな記事になっていく。マスコミのアンテナが不完全なのは事実だが、尖閣デモを見逃したことは、失点と呼ぶに値しない。憂国系団体のデモなんて実際は珍しくないし、ニュース価値は低いよ、という感覚の方が、今回は正しかった。
じゃあ一時期のネットの一部での大盛り上がりはなんだったのかといえば、あれはその界隈で衆論の一致する種類のマスコミ叩きネタだったんだろうな。海外メディアとの対比で批判のフォーマットにストンとはまった。あるいは、憂国系団体のデモにいつもより多めに人が集まってる様子を初めて見て印象的だったということかな。どちらにしても、一過性の話題力しかなかったのだろう。