趣味Web 小説 2011-01-18

だから一票の格差が注目される(地域格差問題)

21世紀になって、工場三法のうち2つが廃止されるなど、大都市への人口集中を抑制する政策の見直しが進んでいる。人口の増加にブレーキがかかった後もたゆまずインフラ整備を続けた甲斐あって、大都市は暮らしやすくなった。通勤電車の混雑も、濃淡はあるが、全体としては緩んできている。だから、都市住人にはもう、人口過密を嫌って地方に投資する理由がない。

かつて、(自分が追い出されかねない施策には絶対に反対する条件で)都市の過密を解消するには、地方の振興は費用対効果のバランスがいい政策に思われた。移住第一世代が多かった頃、それは故郷を豊かにする政策でもあった。だから、地方偏重の選挙区割も、都市から地方への再分配も、概ね支持されたのではないか。

だが、もはや都市の過密化を恐れる必要はないのだとすれば、いやむしろ、今後は学校の統廃合などの痛みを減らすためにも都市への再集約を緩やかに推進していくことが望ましいのだとすれば、地方への利益誘導など「お金の無駄」に他ならない。だから、90年代以降、公共事業批判の声が高まり、地方と都市の意見の相違が目立つようになってきたのだと思う。

昨夏の参院選の一票の格差について、違憲判決が相次いでいる。かつては、都市と地方の住民が同じような政策を支持していたから、「一票の格差より地域代表」という考え方が黙認されていた。だが、見解の相違が拡大したので、今は一票の格差に大きな関心が集まる。そんな世論の力学が判決を動かしているのだろうか。

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