栃木県ではこんな図書類が有害指定されている(2011-02-25)の補足記事。
有害指定リストを見て、「もっと優先的に取り締まるべき本があるはず」と思った方もいると思う。私もそう考えて書店へ行ってみたのだけれど、予想に反して区分販売が機能していたので驚きました。エログロのない本と混ぜて置かれている作品は、有害指定図書と比較すれば描写がソフトなのです。『ジャンプスクエア』とか『チャンピオンRED』はネットでしばしば描写が過激だと話題になりますが、有害指定された『35歳からの恋愛』や『別冊週漫スペシャル』などと比較すれば、雑誌全体としては内容に相当の差があります。
これは小説でも同じで、ふつうの文庫の棚に置かれている「官能小説」には、例えば強姦を「よいこと」のように描くものは見当たりませんでした。他方、カバーに成人マーク(?)の付いた小説には、そのような倫理的制約がない。その自由度は、予想を超えていました。「いくら何でも、こんなの誰が買うんだ?」と不気味な感じさえします。
ともあれ、実感として、有害指定されたレベルの本を一般書の中に発見するのは簡単じゃないです。現状の基準を是とする限りにおいて、区分陳列はかなり厳格に実施されてました。2時間かけて3つの書店を回ったのですが、私個人としては「この本をここに並べちゃうの?」と思う事例は多々あったけれども、いずれも栃木県が実際に有害指定している水準とは距離があるのです。
あと、いちばん印象に残ったのは「きちんと区分されている中には、有害指定された作品とは段違いにひどいものがたくさんある」ことでした。ポカーンとなった。
実際に書店を巡り歩いてみて、「たしかに区分陳列は機能しているけれども、これでPTAが満足するわけがない」と感じました。他方、「出版社が徹底抗戦の構えを取るのも当然だ」とも思いました。現状の成人コーナーには、成人の大多数が近寄りません。成人コーナーに隔離された出版物は、販売上、大いに不利です。
では、どうしたらよいか。私は「成人向けの基準を圧倒的に厳しくすべき」と考えています。例えば、書店の売り場の過半が成人コーナーになれば、書店に訪れる人の大多数が成人コーナーに足を踏み入れるはずです。そうなれば、区分陳列を強制されても商売上の不都合はなく、出版社が規制に反発する動機は小さくなりそうです。
もちろんそうなったらなったで、現行の成人マーク付き図書をさらに隔離してほしいという要望は出てくるでしょう。しかし、青少年の健全育成という大義名分を失えば、もはや行政の出る幕ではありません。書店などが客の要望と商売の都合を天秤にかけて自由に決めればいい話です。