趣味Web 小説 2011-03-01

twitterで横行するカジュアルな著作権侵害

1.

私が望むのは、多くのコンテンツの作り手が、「どうぞご自由に再利用してください」という世界。割合としては少数派だとしても、日本国内で100万人以上がそう宣言したら、著作権フリーのコンテンツが潤沢に供給され、わざわざ違法行為に手を染める必要はなくなるんじゃないか、と。

プロはコンテンツを飯の種にしているのだから、もちろん無料での再利用は基本的に認めないでいい。でも素人は? 趣味コンテンツを権利から解放しても、具体的な不都合はないのではないか。発想を転換しよう。(例えば CC BY として人格権のみ保持して財産権を放棄するだけならハードルは高くないと思う)

3年前に tumblr コミュニティを批判したとき、ある方から「それは日頃の主張と矛盾しないか?」というご意見をいただきましたが、とんでもない。tumblr や toggeter は、再利用する側が「これくらいいいだろ。みんなそういってるぞ」と権利者の意向を無視する世界。これでは権利者が悲しい思いをするに決まっています。許し難いですよ。

2.

Twitter / サービス利用規約によれば、ユーザーの発信した情報を転載・改変できるのは twitter とその提携相手に限られています。toggeter の場合、編集作業の際に、API 経由で発言が参照されるところまでは利用規約の範囲内ですが、問題はその先。togetter では最終的に、検索されたツイートをコピーして転載しています。だから公式RTと異なり、元の発言が消えても togetter からは消えません。twitter の利用規約に同意したら「toggeter とその利用者が、私の発言を無断でコピーして twitter の外部に転載すること」まで許諾したことになる、なんてのは日本語が読めない人の妄言ですよ。

twitter の利用規約に書かれているのは、「占いサイトなどが、占いの結果を記した発言を API 経由で表示する」とか、「テレビ番組の公式サイトが、番組のハッシュタグの検索結果を表示する」といったことは拒否できないよ、という話でしょう。それらはいずれも twitter のデータベースを参照しているので、元の発言を消せば、それらのサイトにも表示されなくなります。これなら、ユーザーはコンテンツの使用権を twitter とその提携先に対して許諾するだけであって、あくまでコンテンツの所有権はユーザーにある、という利用規約の内容と整合が取れます。

いま割合として多いか少ないかはわからないけれども「無断とぅぎゃり禁止」「無断Togetter禁止」を「無断リンク禁止」と同列に扱う人が何人もいます。リンクが合法なように、toggeter で発言を再利用するのも正当行為だ、と。でも非公式RTや無断とぅぎゃりは、引用の要件を満たしていないなら無断転載かその亜種。犯罪として訴えられてもおかしくない。

3.

「これってまさに俺がいいたかったことだよ!」という文章があるなら、いちいち自分の下手な言葉で書き直す必要のない世界がいい。今日の気分を iPod に入れる曲目で表現するように、あるいは服装をコーディネートするように、日記だって心に響く言葉の取り合わせで十分なんじゃないか。

twitter の公式RTは、私の理想をスマートに実現してくれたと思う。著作権をきちんと保護しつつ、テキストを気軽に再利用できる環境を実現するこんなアイデアがありえたとは、私には想像もつかなかった。なお、この感懐は昨日の記事とは矛盾しない。公式RTの利用者が「自分はRTしただけ」と無責任になることなく、情報の再発信者としての自覚を持って公式RTをするなら、何の悪いこともない。

それでも究極的には、やはり著作権フリーのコンテンツが増えてほしい。他人の権利を尊重して生活していれば、世間に著作権フリーのコンテンツが足りないことは実感できるはずだ。「自由に非公式RTや無断Togetterをしたい」「他人の著作物を流用して自分のアイコンにしたい」と思う人は、現状に満足できないはずだ。ならば、まず自分が著作権フリーのコンテンツを社会に提供していくべきだろう。

ふだんルーズな人には、この理屈がわからない。自分なりの基準を持つのはよいが、立法の手続きなしにそれを他人に押し付ける身勝手を、正義面でやる連中が何人もいる。そのくせ、自分が困ると法律の庇護を求める。ふざけるな。まず自らを律して法を守れ。法を破るなら、信念や確信のある場合に限るべきだ。

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