ネットでの反応は冷笑的なものが相当に多いが、私はド正論だと思う。ちょっと不況になると、すぐ赤字転落の危機に直面するのがテレビ局だ。現下の競争がぬるま湯だと本当に感じているなら、起業して新規参入すればいい。チャンネルはいつだって空いている。(追記:氏家さんは2011年3月28日に亡くなられた)
既存のテレビ局が免許に甘んじて手を抜いているなら、優良なコンテンツをどんどん世に送り出し、「現在のテレビ放送にウンザリしている良質な視聴者」とやらの支持を獲得し、視聴率に過度に依存せず善良なスポンサーの広告によって黒字運営ができるであろう。
たしかにテレビは免許制の事業だが、本当はもっと素晴らしい番組を作れる会社があるのに、総務省が免許を交付しないので涙を呑んでいる、なんて話は聞いたことがない。新規参入しても既存のテレビ局からシェアを奪える目算が全く立たないから、新しい申請者がいないのだろう。
個人的に、マスメディアの集中排除原則こそは業界の癌だと思っている。民意を無視した大悪政だと認識している。放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保する
というお題目の結果、どうなっているか。地方で享受できる地上波テレビ番組の貧弱さはひどい。
様々な規制を撤廃して、地デジ難視対策衛星放送を一般開放できたらどんなにいいか。私の狭い見聞からいえば、地方のテレビニュースはNHKだけで十分という人は、じつに多い。地方の民放を守るための規制があるから、キー局の番組をBSで全国にサイマル放送できないのだという話をすると、多くの地方出身者が「それはひどい。知らなかった」という。これはもちろん私に誘導された結果だから参考にはならないが、私が口を開く前から彼らは「テレビのチャンネルが少ないから田舎は嫌だ」と話していた。大勢が現状に不満を感じている。
その他、九州なら福岡、中国なら広島、東北なら仙台、北海道なら札幌でやっている放送局などが、各地方全体に地上波の放送地域を広げることも、可能にしてほしい。市場を無視して強制するつもりは毛頭ない。だが「法規制があるから無理」という状況が本当に人々に支持されているのか。NHKというセーフティネットがある以上、地方から地上波テレビが消滅することはないし、BSのアンテナさえ用意すれば地方ニュース以外のドラマやバラエティー番組は現状と比較して圧倒的に充実する。リスクを最大限に考慮しても、試す価値はあると私は思う。
民放の競争は規制されている。ただし、新規参入者から守られているのではなく、テレビ局同士の競争が制約されているのだ。その結果、地方の住民が損をして(有識者の意見は異なるのだが一般人の多くは「損をしている」と認識している)、地方の民放が市場淘汰を免れている。
地デジ難視聴対策衛星放送のことを知ったときには驚いた。地デジ難視対策衛星放送対象リストを見れば全国に利用者がいるのに、受信できるのは関東のテレビ番組だけなのだ。このことについて、「地元の番組が見られなくなって可哀想だね」という意見は、私の周りでは全く聞かない。地方出身者はみな「羨ましい」「勝ち組」「難視聴地域の方がお得ってどういうこと?」などという。これが庶民の本音だと思う。
地方の民放の存在意義は認めるが、それが情報格差という負担に見合うものなのかどうかが問題なんだ。テレビ局の競争は自由化し、地方民放局には民意が許す上限(0円かもね)まで公費を投入する、それでも潰れるなら、それが民意でしょ。「有識者」たちが庶民に情報格差を押し付けるのは、もうやめてほしい。