趣味Web 小説 2011-03-10

ミスの記録は会社の財産だ

1.

ミスがあったことを会議にかけるより、ミスを裏返して「キミはこの仕事を行うためにこの点を考えて欲しい」という意義を伝えればいい。しっかも、裏を取れば済むだけの話なら犯人捜ししてもメシマズではと。個人的にあとで注意すればいいだけで、みんなの前でやらなくてもいい。

ミスに対して怒ったり、責めたり追い込んだりすることにメリットはないが、原因を調べて記録することは有意義。ミスの記録は会社の財産だ。配置換えを跨いで記録の蓄積を数年続けていくと、属人的な問題なのか、仕事の仕組みの問題なのかが見えてくる。

2.

仕事に問題がある場合、誰がその仕事をしてもミスがなくならない。1ヶ月、2ヶ月ではわからない。運の要素もある。1年、2年というスパンで見ていく。

ミスが一定以上の頻度で発生するなら、あるいはミスの影響が大きいなら、個人の努力に任せず職場として対処する。この判断基準は、最初は適当に決めて公知し、それから様子を見て更新していく。職場単位の判断基準なら結論は「対処する/しない」の二択でよいが、部署や会社単位なら、問題の重大性と対策の必要性に応じて数段階にランク分けをする。また基準更新の仕組みも作る。

対処策は大きく3つある。他部署との連携も、必要に応じて行う。重大な問題に対処するためなら、全社的な取り組みだって必要になるだろう。

  1. 工夫してミスを減らす
  2. ミスがあっても大丈夫なようにする
  3. 全く新しい仕組みに変える

3.

属人的な問題ならどうするか。魔法はない。時々、ずっとミスの多かった人が、急にミスを減らすことがあるから、「一体どんな工夫をしているの?」と話を聞きにいく。すると、その人が何に躓いていたのかが明らかになる。だから、こうした変化を察知する仕組みを作る。

意外と、病気や障碍がミスの原因だったということがある。例えば、本人も気付いていない「右側の視界が少し狭い」という障碍があって、作業中に手許とガイドパネルを同時に見ることができなかった、とかね。新しい職場ではたまたまガイドパネルが左側にあったので、首を動かさずに作業できるようになったという(以降、入社後の適当なタイミングで各社員の視界の広さを1回は検査することになった)。

ちょっとした工夫で人並み以上に活躍してくれる才能を、埋もたままにするのは大きな損失だ。しかし当人は自分にミスが多い原因に気付かないものなので、周囲が勉強して真実を見出す目を磨くしかない。

4.

こうした知見を社内で共有し、データベースに積み上げていくと、30年後には膨大な知見が集積した人材活用マニュアルになる。

大量の古文書を分析して30項目くらいに整理し、各項ペラ1枚に要点をまとめると、教育研修の資料となる。月1回30分、年10回、3年かけて30項目を教育する管理職研修プログラムを組む。

管理職や、間接部門が、人材管理のために一定の時間を割き、「情報収集→マニュアル化→研修資料作成→研修プログラム」というサイクルを回し続けるのが、きちんとした企業の強み。中小企業でも、ちゃんとやっているところは少なからずある。

5.

おそらく、たいていどこでも事故や怪我だけは事例集を作っていると思う。安全教育の資料を作って、年数回、全社員を対象に5分、10分程度であれ、研修をやっているはず。そうした仕組みに関わった人たちが、あちこちの職場に散らばっているだろう。まずはささやかな形でいいから、情報の蓄積を始めよう。

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