昨年10月の話題ですが。
短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するため、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促すこととし、臨時措置として、多様な資産の買入れと固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うための基金をバランスシート上に創設する。
- 5.買入対象
利付国債(残存期間が1年以上2年以下の2年債、5年債、10年債および20年債に限る。)および国庫短期証券のうち、7.に定める入札を実施する日以前に発行されたものとする。
日銀における展望レポートにおいて向こう2年間かけてデフレ脱却する見通しであるのに、2年債で効果が小さくなるのは目に見えている。(中略)長期の市場金利の低下を図るならば長期国債を買うべきであり、ほとんど2年国債しか買っていないというのは、デフレターゲットのひとつの証左である。
わざわざ2年債から20年債の銘柄別残高を示して2年債が中心になっていることを批判しているが対象を5年債以上の長期国債にしたところで、「1年以上2年以下の国債を買い入れ対象とする」と言う要領内でこれ以上の長期をターゲットにすることはできないはずである。
形式的にはabz2010さんの主張に理があるのだけれど、abz2010さん自身がまあエントリーの趣旨としては1年以上2年以下の「長期」では不十分で、もっと大幅に「長期」の国債をどんどん買えということかもしれない
と書いている通り、keiseisaiminさんの問題意識に対応した議論にはなっていないように思う。
私にはやはり、日本銀行の「資産買入等の基金」における「買入対象」の設定は、その政策目標と整合的ではないように見えます。何のためにこんな自縄自縛をしているのか、私には理解できない。長めの金利を引き下げたいなら、残存期間の制限などせず、素直に残存期間の長いものを買う方がよさそうなもの。
直接引受っぽくなるのが嫌なら「発行後1年以上経過した利付国債」とでもすればよさそうに思えるし、発行量の少ない国債を日銀が買い占めてしまい市場が機能しなくなることを恐れるなら「種別に発行量の**%を買入上限とする」という制約をしてもよさそう。でも「資産買入等の基金の運営として行う国債等買入」において残存期間が2年より長い国債を買うことが政策意図に反すると考える理由、あるいは想定されるリスクって何なんだろう。私には思いつかない。
ただ、私が理由を思いつかないから日銀は自己矛盾している、というつもりはありません。単純な話、日銀の辞書では「長め=1年以上2年以下」だというなら、何ら矛盾はない。でも、それなら中期国債に倣って「中期」と表現してほしいと私は思いますが……。
念のため。1.で話題にしているのは、あくまで「資産買入等の基金の運営として行う国債等買入」の話。日銀はその以外の名目において残存期間の長い国債を買ってます。
日銀が遂行中の作戦はいろいろあって、そのうちのひとつにおいては「残存期間が2年より長い国債を買いません」という、それだけの話。所詮は日銀の都合による分類であって、市場の側からみれば、中澤さんと吉川さんがザックリ捉えているように、「日銀が全体としてどんな国債をどれだけ買っているか」が重要なのではないでしょうか。
今回の地震によって、わが国は、地理的にも広範囲な被害を受けており、当面、生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化も懸念される。
買入残高を5兆円から10兆円へ増額するとのこと。ただし指数連動型上場投資信託受益権等の買入れは2011年末までの予定を半年延ばして、2012年6月末までに行うということにしており、買入のペースが2倍になるわけじゃないよ、ということらしい。