趣味Web 小説 2011-05-08

用語「文系」「理系」撲滅試論について

1.

この手の主張には与しない。個人的な信条として「文系」「理系」という言葉を使わないことを宣言するなら、当人の自由だと思う。だが、不完全さをあげつらいその弊害を理由として大分類そのものを否定するなら、同じ理屈で小分類も危うくなり、究極的には言葉が成り立たなくなるだろう。

dlitさんが「文系」「理系」の問題点として挙げているのは次の4項目だ。

  1. 定義が曖昧である
  2. 特定の領域の代わりに使用されてしまうことがある
  3. 雑な一般化を誘発する
  4. 他の「~系」が新設し難いために、二分法に陥りやすい

こうした理由で「文系」「理系」を撲滅すべきだといえるならば、「女」「男」も撲滅すべきか。

dlitさんが Yes と即答されるなら、その価値判断はわかりやすい。「女」「男」といった大雑把なくくり方をするメリットは小さく評価するということだろう。「女」「男」の区分すら否定するなら、世の中のほとんどのケースについて、悩むことなどありはしない。

逆に No だとすれば、複雑な状況をグループ化の手法によって単純化して把握するメリットと、単純化のデメリットのいずれが大きいのかは、毎回きちんと精査する必要がある、ということになろう。また「所詮は比較の問題だ」ともいえて、デメリットばかり言い立てても片手落ちだとわかる。

2.

「多少の不正確はあっても、大掴みで捉えることに、より大きなメリットがある」状況は珍しくない。大きなところから話を始めて、次第に微細な議論へ移行する際に、一定のコストを支払うことになるのは当然ではないだろうか。その手間を惜しむ気持ちはわかるが、解決策として大掴みで捉えること自体を否定するのは乱暴だと思う。

A: B君の進路は理学部?それとも文学部?
B: 理学部
A: へー数学大変だね!

dlitさんはこの例文を示し、「理系」を理学部、「文系」を文学部で代替しても全く問題ないことを示したというのだが……。これは、相手のことをよく知らないから、まず理系か文系かを問うていた場面。それなのに、理学部と文学部の二択にするのは無理がある。どちらでもない可能性の方が高いじゃないか。

「Bくんの進路は理学部か工学部か医学部? それとも文学部か教育学部か経済学部? あるいはそれ以外?」などと小項目を列挙するのが煩雑だから、定義が多少曖昧でも名前のある大項目がほしくなる。「Bくんの進路は何学部?」という質問もありうるが、進路を大雑把にしか決めていない人も多いから、やっぱり「文系」「理系」くらいの大きさの言葉がほしくなる。

ちなみに、「Bくんは数学IIIと数学Cも受験科目の範囲内?」といったセリフなら、定義の曖昧な「理系」という言葉を使わずに、もともとの意図に沿った質問をしたことになるだろうと思う。

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