趣味Web 小説 2011-06-02

とくに理由はないが欠席する

1.

私の場合、いとこが4人いて、うち3人が結婚しているのだけれど、1番目と2番目の結婚式には出席しなかった。出席したくない理由などなかった。でも、出席したい積極的な理由がないから、わざわざ愛知県まで行って出席する気になれなかった。つまり単なる面倒くさがり。

じゃあ3番目の式にはなぜ出たのかたのかというと、これは気分の問題だな。私の「面倒くさがり病」が弱まってきたタイミングだったから、としか説明のしようがない。

ちょっと面白いなと思ったのは、いま結婚式の招待状って、事前に意向伺いがあるのね。招待状を出す時点で既に会場のキャパは決まってしまっているので、招待状を出してから「出席率が悪い」と判明するのでは困る。だから電話やメールであらかじめ出欠を確認して、それから招待状を出すという。なるほどなあ、と。

じゃあドラマとかで、招待状がきてゴミ箱に捨てるシーンとか、あれはどういうことなんだ? んー、あれは同窓会か……。たぶん、そうだな、うん。あれっ!? でも、出欠の返事を出すのを迷っているうちに当日になってしまって、同窓会の案内葉書にしたがって会場へ行く、なんてシーンを見たことがあるような……。その場合、出欠の確認をとる前に会場が決まっていることになるから、やっぱりおかしいな……。

その後、いとこたちとは何度も会っている。子どもが生まれたのでお祝いをしたりとか。ちなみに、いとこの子は男の子なら従甥(じゅうせい)、女の子なら従姪(じゅうてつ)というそうだ。

2.

ま、そんなわけで、「なぜ葬式に出たくないのか」を語らず、「出ないこと」の影響ばかり考えている増田さんの様子に、何となく感ずるものがあった。たぶん、人に説明できるような「葬式に出たくない理由」は存在しないのだろう。自分にとって無意味な行事に参加することに徒労感があって、もともとは「どっちでもいいなら出ない」くらいの気持ちだったんだけど、「出ない」と宣言してみたら話がこじれてしまった、とか。

まあ、これは私の妄想なので、実際は違うのかもしれないが。

ともあれ、理由の説明などせずとも、誰も説得できなくとも、「葬式に出ない」と決めたなら、無理やり出させることは現実的には不可能。因習に従わない人がいると、「なんでだ」「理由をいえ」とうるさい人がたくさん出てくるが、説明しても問題は解決しない。正直な気持ちを話したって納得しないんだよ、どうせ。だから「とくに理由はありませんが」といって、ただ欠席すればいい。

みんなと違うことをすると、ただそれだけで不安になる。誰かに「それでいいんだよ」といってもらいたくなる。増田さんが葬式に出なかったことで実用上の不都合は発生しないはずなので、私は「それでいいんだよ」といいます。

増田さんのお母さんは、情けない思いをしただろうけど、それは自分の価値観によって自分自身を苛んでいるのだ。子どもが葬式に出なかったせいで誰かにいじめられるとか、そうした具体的な不利益はないだろう。いまどき陰口を叩く人も少ないだろう。むしろ「たいへんねぇ」と同情されるんじゃないか。そんなわけだから、家族の迷惑については、あまり思いつめなくてよいと私は思う。

3.

葬式が本当に「遺族のためのもの」なら、孤独視した老人の葬儀を行うNPOがやっていることって、何なんだろうな。簡素なりとはいえ、棺に花を入れたりしているのだけれど。あれなんか、遺族のためでもなくて、「これから死にゆく登録会員たち」のためのセレモニーなんだろうな。

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