趣味Web 小説 2011-06-03

高層緑化型都市計画は当面続くと思う

2つリンクしたが、以下では松永さんの記事の感想を書いていく。

今回の震災でも、インフラの復旧は電気が断然早かった。まあ、水道をやられたら電気だけあっても風呂には入れないわけだが、とにかく電気は1週間以内に復旧してくれる頼もしいインフラだ。

たしかに電気は復旧した後も停電する。だが震災直後の計画停電は、意外と早く終わった。夏場も、基本的に停電はしない方向だそうだ。仮に夏と冬に停電が起きるとしてもせいぜい2~3年のことなので、総停電時間は高々200時間だろう。200時間に備えて数十年の暮らしを設計するのは馬鹿げていると思う。

それに計画停電なら、終わる時刻がわかっているわけで、エレベーターが止まって部屋に帰れないなら、地上で時間を潰せばいい話。地震直後の終りの見えない停電のときには、避難所へ行けばいい。特殊な状況には、割り切って特殊な対応をすべき。

さて、高層緑化型都市計画が見直されるか、という話。

今後、日本は数十年以内に確実に少子高齢化で人口半減時代を迎える。むしろ土地は余る時代がやってくる。そのときに老人となっている我々自身のことを考えても、高層よりも低層の方がずっと適しているということになるだろう。コンパクトシティ構想においても、中心街に住居を集めるとしても高層化の必要性はなくなっていく。

現在でも、本来なら超高層住宅など必要ではない。が、小さな建物と狭い道路が一等地を無駄遣いしているから、狭い空き地に20階建てのビルを建てるしかない。宅地からも固定資産税をガッツリ取るといった半世紀以上前から提案され続けている施策を実施して、土地の流動性を大幅に高めないと、「たくさんの低層建築+超高層住宅」という非効率はずっと続く。

2009年のデータによれば、23区内の住宅の総床面積は約1億平方メートル(平米)、オフィスは約9千万平米。これに対して東京23区が約6億平米、山手線の内側が約6千万平米だ。23区内の土地の1/20を建物用地として20階建てのビルを建設すると、大雑把には総床面積6億平米程度となり、4億平米の増床が可能だ。すると単純には(実際には無理だが)23区外の東京駅から半径30km圏内の無人化+職住隣接が実現できる。10階建てとしても1億平米増床できるから、埼京線沿線を無人化できる。

一等地から小さな建物を全て排除し、区画を整理して道路を減らし、10~20階程度のビルを建設できれば、土地利用の圧倒的な効率化が可能になる。でもそれが不可能だから、超高層住宅が必要になってしまう。

例えば古い街があって、半分の家が再開発に協力してくれても、賛成派の土地はモザイク状になるため、まとまった土地の面積は全体の数%程度がせいぜい。街の中で引越しをしてもらって半分の土地を空けるということができればいいが、不可能だ。となれば、やはり超高層住宅を建てざるをえない。

余談:

今後、自動車を前提とした低人口密度社会は見直しを迫られると思う。高度成長期のインフラを更新する財源の不足に対応するためには、集落の統廃合が合理的だ。でも結局、見直さないのだろうな……。

集積の利益はきわめて重要だ。日本の経済発展は、繁栄している土地に人が集まることで維持されてきた。過疎の問題は、人口の減少ではなく、「生活水準を維持できるだけの富を生み出せなくなった土地にしがみつく人々」の生活保障だった。この先、全国の都市で過疎問題が起きる。

人口が減った過疎の村で、「インフラの補修費を節約するため、村の中心部に住宅を集中する」といった計画を実現した例はほとんどない。ひたすら陳情を繰り返して、広い土地に散らばった家々へ電気と水道を引き、膨大な量の道路を直していく。その非効率を続ける財源は、もうないというのに。

市街地でも、まず学校が維持できなくなった。次は集会所や公民館。行き着く先は過疎集落と同じである。街を統合するしかない。しかし……それは無理だろうな。となれば、日本は集積の利益を諦め、非効率なインフラ補修をやって、貧しくなっていくしかない。

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