子どもが食事に飽きて遊び始めてしまう、ということで悩んでいる親御さんが世の中にはたくさんいらっしゃいます(一例)。この問題には、簡単な解決策があります。
これは私にとっては常識的な指導法だったのですが、mixi日記やTwitterを検索してみると、どうも離乳食の次は1日3回の食事へパッと移行して、「食事のたびに子どもを叱りつける毎日」に突入する方が非常に多いらしい。私はもうビックリして、この記事を書きました。
以下、ROYGBさんの記事に応える形式で綴った補足の雑談です。
標準量にこだわる必要がないというのはその通りではあるけれど、「もういらない」と言った子供が少しすると「おなかすいた、お菓子食べたい!」とか言い出したりするのもありがちな気がします。もとの話の家庭でどうなのかということはわからないので、まあ一般論として。
あとは食事前にお菓子を食べたりして食事が食べられなくなるケース。これも与える親が悪いといってしまえばそれまでですが、お菓子と食事の配分というのは難しいところです。
人体はそもそも1日3食という生活スタイルと不整合で、1日5~6食の方が自然だという話を読んだことがあります。ちょっと出典を思い出せないので、以下は眉につばつけて読んでください。
人類は年中食べ物のある環境で進化し、それから世界に広がったので、食事の回数が少なくてもすむ機構を発達させていません。「動く、食べる、休む」を1日に何回も繰り返すようにできています。農耕がはじまって以降、「動く」と「食べる」の関係が間接的になり、また「食べる」の手間が大きくなってしまったので、身体に我慢させて「食べる」回数を減らすことになり、1日2~3回食べるスタイルに落ち着いたのです。
ただし、1日2~3回の食事では脳などでエネルギー切れを起こすため、間食の習慣が残りました。「間食=お菓子」という構図は、食文化の発展による食事の手間の増大と折り合いをつける工夫から誕生しました。間食に適した条件として、作り置きできて、再加熱なしでもおいしく、素手で手軽に食べられて、持ち運びがしやすく、体積あたりの栄養価が高い……と並べていくと、お菓子の他にあまり選択肢がないことがわかります。
現代の日本には冷蔵庫がありますので、原点に返って、単純に料理を小分けにして時間を置いて少しずつ食べればよいと思う。あるいは果物とかですね。食後のデザートではなく、間食という形で食べる方が、かつての人類の生活に近い。文明の歴史は進化の歴史と比較すれば短く、現在も人体は文明以前の生活スタイルに適合したつくりのままなのです。
そんなわけで、子どもを30分~3時間間隔の授乳から短期間で1日3食へ移行させてしまうのは、文明社会に暮らす大人の都合を子どもに押し付ける行為だと私は考えています。大人の都合が隅々まで浸透している小学校に入学するまでには、多少の訓練が必要でしょう。それでも、低学年なら家庭で午後3~4時のおやつをとれますよね。ならば午前10時のおやつを我慢できることだけを目標にすればよいはずです。
また子供の年齢にもよるけれども、食事中に遊んだりしないというのも教えていく必要もあります。ベネッセのこどもちゃれんじなどの教材でも、そういったことを取り上げているときがあります。
それはそうなのですが、「どうして食事に飽きるのか」といえば、第一の理由は食欲が満たされてしまっているからだと思います。ROYGBさんの引用されている例では、食事中に遊びだした子の食べ残しを大人が食べてしまおうとすると、子どもは遊びをやめるらしい。でも、私が思うには、たぶんその子はもう満腹なのです。けれども、あとでおなかが空くのも嫌だな、と。「残りは後で食べる」という選択肢を奪われそうになると、将来の苦痛を回避するために、仕方なく食べるのです。
小学校入学が迫っているならともかく、1日5食でいい年齢なら、「おなかが空いたら食べる」「満腹になったら食事を終える」という身体の仕組みに対応した指導でよいのではないでしょうか。つまり、「もう満腹だけど、先を見越して、もっと食べておかないと……」なんて決断をさせるより、「残りはおやつの時間に食べる!」「じゃあ冷蔵庫に入れておきなさい」「わかった。ラップを取ってくるね」の方がいい。
「間食=お菓子」だから間食はダメで、だから1日3回の食事という生活スタイルを徹底しなければ……という問題の捉え方や状況認識には、根本的な誤りがあります。本来はする必要のない指導をして子どもに無用の我慢を強いる親御さんが多いように私は感じます。親が身体的に困難な内容を子どもに押し付け、当然、子どもはいうことを聞かず、お互い磨り減っていく。残念なことだと思います。
インターネットが普及してみたら、みんなが共有する情報は「食事中に子どもが遊び始める」「1時間かけても食べ終わらない」「食事の手が止まってお喋りばかり」「叱っても効果がない」といった愚痴か、そうした「問題」を親の視点から一方的に解決する方策ばかりでした。つまり従来と何ら変わりない。マスコミは情報消費者の需要によく対応していた、ということ。
「子どもが食事に飽きて遊び始めるのは悪いことだ」という直感に距離を置く大人が、あまりにも少ない。自分だって、かつては子どもだったはずなのに、子どもにも言い分があることを忘れているのです。それでいて、ライフハック系の記事とかで「間食は有効だよ」みたいな情報が出てくると「私も同感」みたいな反応がワッと出てくる。「あれっ!?」と思わないのかな。まあ、育児クラスタとライフハック大好き系の人々があまり重なっていないということなのかもしれませんが。
食事のマナーを教える指導は必要でしょう。ただ、「大人の都合をナマの形で子どもに押し付けるから大きな摩擦が生じる」という構図に気付くことの方が重要だと私は考えています。1回の食事の量を減らし、食事の回数を増やすことで、子どもの食事のマナーは劇的に改善する可能性があるのです。
同じことを何度いってもできない。なぜだ? バカなのか? 違うわけです。言いつけを守るのが、あまりにもつらい、だからできない。こんな簡単なことなのに? 子どもにとってはそうではない。たいていの子は、いい子になりたいと思っていますよ。だけど、あまりにハードルが高くて、理想を実現できない。そうして親は子にガッカリして、小言ばかりいう。叱られ続けて、子どもも自分自身にガッカリする。
こんな状況は、私たちが変えていくべきです。