『ユースフル労働統計 -労働統計加工指標集-2011』から面白いデータをいくつか拾っていくシリーズ。
高学歴化と高年齢化の進展により、80年代のドラマなどによく登場した「課長にもなれないダメな夫」は、いまや「ふつう」になりつつあるということ。人口が増加中の社会では、日本中でベテランが相対的に少なかったので、大した能のない人物でも、ペーペーよりはマシだから昇進させるしかなかった。だが今はそうした状況にないので、昇進の基準が厳しくなったわけだ。
今しばらく、親を超えられない子どもたちの時代が続き、その後はまた「蛙の子は蛙」に復していくことになるだろう。
何でもいいからとにかく課長と呼ばれてみたい人は、建設業か不動産業へ進むのがいいらしい。逆に、肩書き自慢に向かないのは運輸業や宿泊業。家族や親戚にこうした業界で働く人がいたら、昇進の話題は出さない方がよさげ。
部下の人数が多いから「偉い」というわけでもないだろうが、部長が部下全員の姓名と顔を覚えているのが当然の業界と、そうでもなさそうな業界がある、ということがわかるデータ。金融・保険業の課長と部長の格差も面白いな。
こうした資料は、取材をしないで小説を書く人には、いくらか参考になると思う。例えば、情報通信業界を舞台にした小説で、ちょっと目立つ働きをした部下に対して部長が「キミの名前は?」と問うシーンを描いてしまうと、どうにもリアリティがないわけだ。