趣味Web 小説 2011-10-02

支出の抑制と(実質)増税抜きの財政再建はない

1.

  1. 「増税はずっとあとでいい」のウソ
  2. 「経済成長すれば増税は必要なし」のウソ
  3. 「永遠に借り換えできるから大幅な増税は不要」のウソ
  4. 「政府紙幣発行で財政再建可能」のウソ
  5. 「インフレ実現で財政再建可能」のウソ
  6. 「内国債は将来世代の負担ではないから積極財政を実施すべし」のウソ

國枝繁樹さんの財政再建論。よく読めば、國枝さんがデフレ脱却も経済成長の必要性も全く否定していないことがわかる。私はかなり説得された。

高齢者の増加を相殺できるほど福祉水準の切り下げをしていないのだから、いずれ増税は避けられない。ここしばらくは借金を増やして先延ばしにしているが、いつまでも続けられるものではない。デフレでは税収が下がってしまうので、まずインフレにしないと……という主張に私は賛同しているが、ようは税制を変えずインフレによる実質的な増税を実現しようという話だ。

デフレ下で力強い経済成長はきわめて困難だとしても、インフレになったらメキメキ経済成長するというものではない。デフレの脱却は「力強い経済成長」の必要条件だが十分条件ではない。インフレになっても不景気が続く可能性はある。この場合、生活実態はほぼ横這いなのに、インフレで税負担だけ増えることになる。税制を変えないことを「増税なし」と表現するのは、ウソに片足突っ込んでいると私は思う。

國枝さんは、インフレ頼みの実質増税では、税制が本来意図していた負担のバランスが崩れてしまうことを問題視されている。今から心配することではないと思うが、いずれ直面する課題ではある。そのとき、「インフレによる実質増税が既に起きていて、そのバランス調整をする」という構図を見落としてはならないはずだが、税制上の「増税」「減税」ばかりが話題になりそう。

2.

2005年にbewaadさんが提示してくださった「増税」回避シナリオを再読した。

このシナリオでは、利払いを除く支出がインフレ率と同じ比率で毎年度増加することになっている。高齢者が増えるのに実質支出が横這いということは、高齢者の増加を相殺できるレベルで、福祉の水準を切り下げるか、福祉の「効率化」を達成することを意味している。だが「効率化」は焼け石に水の水準だろう。

また、経済成長に応じた支出増がゼロなので、25年の長きにわたり、大幅な経済成長をよそ目に社会福祉などは全く充実しないことをも意味している。公共部門では、経済成長による税収増を全て借金の返済に充てるということだ。

さらに、税収弾性率が1.1で一定となっているので、経済成長すればするほど税負担が増す。それでいて、実質GDP成長率は一定と仮定している。四半世紀も実質負担増が続けば、安定した経済成長の継続は、実際には次第に難しくなっていくように思える。(とくにキャッチアップ効果シナリオにおける実質増税のスピードはかなり激しい)

まとめると、bewaadさんのシナリオは、おそらくは福祉の大胆な圧縮を含む非常に厳しい支出の抑制と、インフレによる実質増税を緩和しない(それでいて安定した経済成長が継続する)ことを前提としている。

つまり、財政再建は、どうしたってたいへんつらく厳しい。もちろん力強い経済成長は必要で、そのためにデフレ脱却が最優先の課題となる。だが、bewaadシナリオほどの支出抑制はきっと無理なので、そう遠くない未来に、インフレによる実質増税に加えて更なる増税が必要になると思う。

補足:

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