以前も書いたことだけど、道路は自動車を持っていない人からとった税金も投入して安全性と利便性の向上に努めている。自動車と鉄道の競争は不公平だ。社会的圧力によって鉄道の安全性を高めるならば、ホームドアも税金で設置するのが筋だろう。
鉄道会社の立場で考えてみると、ホームドアを設置したことで利用客が増えるかといったら、増えない。ホームドアがなかったからといって、賠償請求されるような状況にあるかといったら、そうでもない。人命は大切だといっても、まじめな会社ほど市場で損をする状況なので、インセンティブの設計に難がある。
曖昧な社会的要請に頼るより、バリアフリーのように、法律で義務付ける方がマシ。自動車との比較ではいっそうコスト面で不利にはなるが、せめて鉄道事業者間では競争の条件が公平になる。ただ……既に赤字か、収支トントンの鉄道会社にとって、死刑宣告になってしまうのが問題か。
やっぱり、鉄道のホームドアには費用以上の価値があると人々が信じるなら、公金で設置すべきなのではないか。これまで市町村税を中心に道路特定財源以外から注ぎ込んできた道路予算と比べれば、断然小さな出費なのだし。
自動車との比較の問題を抜きにすれば、駅の利用者から費用を徴収するのが一番いいと私は思う。入退場のたびに10円、20円とか。で、積み立て金がたまったらホームドアを設置するわけ。でも、いろいろな理由で、この提案は非現実的なのだそうだ。残念……。個人的には納得していない。
ROYGBさんにご紹介をいただいた特定都市鉄道整備促進特別措置法は、ホームドアを設置する駅の利用者だけから費用を徴収する方式ではなく、少し私の理想とは違います。
個人的にはそもそも鉄道料金の認可制に反対で、鉄道会社どころか「駅」の単位で自由に料金設定できる方がよいと思っています。ホームドア設置のため一時的に駅の利用料を値上げしてみて、とくに客足が減らないようなら「早期設置のため」として値上げ幅を拡大する……みたいな自由度がほしいです。
金持ちの多い街では駅がリッチになり、そうでない街では駅舎は古いけど駅の利用料がゼロで運賃負担のみだとか……。あとは、乗車率の低い昼間や、日曜・祭日の運賃を下げたり、逆に混雑時間帯の運賃を上げたり……。料金が自由になったら、鉄道事業車間の競争やサービスにもっと多様性が生まれると思う。