私の出身高校の放送部は、顧問の先生が付属中学校の教頭に就任して若い教員にバトンタッチするまではずっと、NHK杯で活躍を続けていた。その作品が在校生に公開される機会はついに一度もなかったが……。
昨年、全国大会の準々決勝で起きた採点ミスのため準決勝進出を逃した兵庫県立伊川谷北高校は、「準決勝進出」の表彰状では納得せず、再審査を求めたが、却下された。そこで、この問題に関し50人に取材した作品を制作し、今年の地区予選を突破したという。ところが。
その後、兵庫県内高校の放送部顧問教諭らでつくり、地区予選を審査する「県高校視聴覚部会」が緊急理事会で失格を決めた上、県大会進出の取り下げを求めた。同校には「今後の運営に問題が出かねない」「(ミスは)解決済みの問題」と伝えたという。
神戸新聞社の取材に対し、翌年のコンテストで同部会が再審査を働きかけた経緯などを踏まえ「周囲の努力を理解していない」と判断したという。規定では作品に誹謗(ひぼう)中傷や差別的意図を含む場合に失格にするが、別の判断という。
同部会放送文化部長の島耕一・神戸国際大付属高校教諭は「放送ジャーナリズムの役割は理解しているが、教育的な側面を重視した」と説明。一方、主催者の一つNHK広報局は「コンテストの運営は全国の先生らで組織する運営委員会に委ねており、その判断に対し見解を述べる立場ではない」としている。
そんな理屈で失格にしていいのか……。もし「両論併記風にまとめているが、実際には取材に偏りがあり、内容に重大な不備がある」とか、「内容が建設的でない」といったことであれば、ふつうに採点して低評価をつければよいと思う。
それでもあえて失格にしたい理由があるとすれば、採点基準の問題だろうか。ふつう、この手のコンテストでは、ひとつ致命的な欠点があっても、「それだけで落ちる」ということはない。10の評価項目があって、その合計点で決める、とか。この場合、ひとつの項目が0点でも、他で高得点なら総合トップもありえる。問題の作品が地区予選1位となったのは、そういうわけなのかも。
プロなら各評価項目に足切り基準を設けてもいいかもしれないが、これはアマ対象のコンテスト。ふつうは、粗があっても面白い作品の方を評価したい。が、それゆえに、「特定の作品をどうしても低評価としたい場合には、失格とするしか手がない状態だった」という可能性。
今後の対策としては、「技術的な不備は項目別の最低点を0点のまま維持するが、内容面の不備は最低点をマイナス50点とする」といった手がある。特定の作品を落とすために採点基準を変えるのはおかしい。今回の失格には大いに疑問がある。が、再発防止策として採点基準を見直すのは、悪いことではない。
NHK杯の審査員にとって、「NHK杯の審査」をテーマにした作品は興味深いだろう。その意味で、「題材の選択がフェアではない」かもしれない。一般人にとっては重要ではないが、審査員にとっては避けて通れない問題を扱った作品が増えるのは困る。だから、失格とする……。
まあ、何人も先生が集まって失格と決めたわけだから、それぞれにいろいろなことを考えていたろう。神戸新聞の取材を受けた島さんが語ったことが全てだと仮定して、あれこれ論駁を考えても、あまり実りはなさそうではある。
2ちゃんねるの反応を見ると、「このニュースをそんな風に消費するのか……」と。NHK叩きに帰着させたり、「どうせ2ch脳でNHK批判したんだろ」と早合点したり……。