趣味Web 小説 2011-12-16

なぜかネット世論は名誉の分配に無関心

1.

般若心経を初音ミクが歌う動画があった。その動画へのコメントとしてザックリした現代語訳が投稿された。そのコメントが、ニコニコ大百科の動画記事に転載・整理された。その記事が1年ほど前に無断転載された。今になって、無断転載版が、ネットで話題に。

私は、「何であれ、話題になってよかったじゃないか」とは思わない。権利者が「よかった」と思っているならいい。でも、真意はわからぬ。そういう、わからない段階で、こうした事態を手放しで賞賛するつもりはない。

あと、いつものことだけど、ネット世論は「盗用」には敏感なのに、名誉の分配には関心がない。無断転載記事には、転載元へのリンクがあった。それなら、「これは素敵な記事だなぁ」という意味のはてブくらい、なるべく原本に近いところですればいいのに。その程度の手間を惜しむというのが、どうにもね……。

こういう人らが断然多数派ということでなかったら、えっけんさんが「面白い記事だったので、タンブラしました」…がどんだけのブロガーを無気力にさせているか少しは考えろなんて書く必要もなかったろう。

2.

そもそもコメントを無断転載して動画記事を作っていいのか? 利用規約を読んでみたが、よくわからなかった。

……とすると、動画のコメントの権利はニワンゴにあり、大百科の記事は未来検索ブラジルが権利を持つ。ニワンゴは大百科の共同管理責任者でもあるが、大百科の記事の権利者ではない。ここまではわかったんだけど、結局、ニワンゴが権利を持っているニコニコ動画のコメントは、ニコニコ大百科で自由に再利用できる、と読めるような説明は、私には見つけられなかった。

まあでも、コメントを勝手に使ったな、といってニワンゴが怒る展開はきわめて考えにくいので、大百科の記事までは、著作権関連では実質的に問題にはなりそうにない。

3.

般若心経の件では、少数とはいえ、無断転載記事が注目を浴びていることへの違和感の表明があった。ところがこの記事のはてブには、その手の意見が全くない。本当にひとつもない。どうなってるんだ。

この記事、画像の出典はおろか、著作者名すらひとつも記載されていない。唯一、「この絵は私が描きました」「この写真は私が撮りました」というウソはついていない。たぶん、そういう誤解をする人も、いない。でも、そんなのは当たり前だよね? 紹介されている画像が全てパブリックドメインなら、出典も著作者名表示も不要だから、著作権法違反と決め付けることはできないが、こういうのを誰も疑問に感じていないように見えるのが不愉快。

「不愉快なら見なければいい」という話ではなくて、こういうのを許容し、むしろ大歓迎している社会が不愉快だということ。ひどいものは、もっと批判されるべき。

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