私の中では昨日の記事と関連している話題。
先進国でマイクロクレジットが普及しない最大の原因は、それが福祉・生活保護にかかわる公務員やNGOの“既得権”を侵害するからだろう。“かわいそうな貧しいひとたち”にお金を配る仕事がなくなると、このひとたちは用なしになってしまうのだ。
橘さんの邪推は妥当でないと思う。ユヌスさんのマイクロクレジット事業は、バングラデシュでも貧困の解消に大きな寄与をしていない。もちろん、一部の人にとっては、間違いなく助けになった。でも、マイクロクレジットを過大評価して、いきなりマイクロクレジット事業の解禁を目指すことには賛成しない。
ユヌスさんの考案したマイクロクレジットを日本で実現するには、大胆な規制緩和が必要になる。様々な金融規制は、多くの悲劇の上に成立したもの。現在の規制に過剰な部分はあるに違いないが、規制緩和はソロソロと慎重にやっていくべき。まずは実験的に実施して、そのメリットが日本でも生じるのか否か、そして特定の条件下では、過去に規制を必要とした災厄が再現されないのかどうか、災厄の発生は不可避だとしてもメリットの方がずっと大きいといえるのか否か、といったことを確認してほしい。
それはもちろん、ただ待っていても誰も始めないし、私だって積極的に音頭を取るつもりなどない。でも、マイクロクレジットの成功を確信する人が、前記のような手順を踏んで実現を目指すなら、そのチャレンジを応援したい。それは、橘さんの記事を読んで「ちょっと待って」といいたくなることと何ら矛盾しない。
大抵の官僚批判もそうなんだけど、利己主義によらず説明のつく話を、利己主義で説明してしまうと、自説の問題点を探す意欲が失われてしまう。
ユヌスさんのマイクロクレジット事業は、やっぱり「5人組」の連帯責任による返済の部分に課題がある。また、バングラデシュでの「成功」は、フラつきながらも高い経済成長率を実現してきたバングラデシュの経済状況に後押しされていた部分もあった。メリットとデメリット(あるいはリスク)との比較において、先進国で慎重論が出てくるのは当然の話だと思う。