趣味Web 小説 2012-01-10

優しさと背中合わせの緊張感

ここ数年、私が大量のテレビ番組を視聴したり、漫画をたくさん読んだり、コンソールゲームをいっぱいプレイしたりしてきたのって、小学生や中学生の頃に(クラスメートたちとの相対比較において)あまりそういうことをしてこなかったからではないかと思っている。たぶん、本当は好きなだけテレビ番組を見て、漫画を読んで、コンソールゲームをプレイしたかったのだろう。

社会人になってからおなかを壊すまで食べたのがアイスクリームで、これは小学生の頃、心底食べたくて、でも食べられなかったものだ。当時は牛乳と鶏卵と大豆のアレルギーがひどくて、アイスクリームは全く食べられなかった。食事制限をしていたのに、アトピーも喘息も容赦なく襲い掛かってきたので、私は「どうせこんなにひどいアトピーが出ているのだから、アイスクリームを食べたい。アイスを我慢して、こんなに皮膚病がひどくて、そんなのはあんまりだ」と訴えたが、母は絶対に許してはくれなかった。

弟なら何年でも抵抗を続けただろうが、私は「母を困らせない子どもであろうと努めることで得られるいくつかの特典」に価値を感じていた。だから、私はすぐに抵抗を止めてしまい、その後、アトピーがかなり落ち着いた後も、「アイス食べたい」とはいわなかった。

今も私は、母の前ではそういうことはいわない。両親が家にくるときは、冷凍庫のアイスクリームのストックをゼロにする。冷蔵庫の生卵も、菓子棚のチョコレートもそうだ。私が本当はアイスクリームやチョコレートを食べたくて仕方なかったのに我慢していたことや、「今は好きなだけ食べられて幸せ」ということを、私は隠蔽する。

もちろん母は、全てお見通しだろう。それでいい。親子の間には、そういう「優しさと背中合わせの緊張感」があるくらいが、ちょうどいいと思う。

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