約1万5千字の判決文を、ようやく読み終えた。
これらの点を考慮すると,いまだ,被告人において,本件Winnyを公開,提供した場合に,例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識,認容していたとまで認めることは困難である。
多数意見は、Winny作者の言行を仔細に検討し、著作権侵害を幇助する故意を消極的、否定的に評価することによって、幇助犯の成立を否定している。
逆にいえば、単純な「包丁無罪」の論理は排除されており、個人的には安心した。この判決は、自分の作った物が例外的とはいえない範囲の者
に悪用されることを認識している場合、何らかの対処が必要になるといっている。ソフトウェア自体は価値中立だから即ち無罪、という内容ではない。ソフトウェア開発者にも倫理が求められるのは、私は当然だと思う。
ともあれ、こうして上告が棄却されたので、大阪高裁の無罪判決が確定した。
一方で,一定の分野での技術の開発,提供が,その効用を追求する余り,効用の副作用として他の法益の侵害が問題となれば,社会に広く無限定に技術を提供する以上,この面への相応の配慮をしつつ開発を進めることも,社会的な責任を持つ開発者の姿勢として望まれるところであろう。私は,前記の1ないし5から,被告人に幇助犯としての犯罪の成立が認められ,上記のような被告人にとっての事情は,幇助犯として刑の減軽もある量刑面で十分考慮されるべきものと考える。
個人的には大谷剛彦裁判官の反対意見の方により共感したが、多数意見も十分に理解できた。
私は地裁と高裁の判決を読んでおらず、「47氏=Winny作者」を検察は証明できなかったと思っていたが、最高裁の判決文の中では、47氏の発言はWinny作者の発言として扱われていた。直接証拠はなくとも、状況証拠から「47氏=Winny作者」と裁判所は認めたのだろう。