ブルーレイレコーダーを買ってから外部入力端子がないことに気づいて怒ったという話。
当たり前だけど、買う時に機械の背面の外部入力端子の有無なんて、いちいち確認しない。これまでケーブルテレビの番組は録画できて当たり前だと思ってたから、よもやそんなこともできないレコーダーが存在するなんて想像できるわけがない。
自分の感覚を正義の基準にしてしまう困った人がいるから、「(アンテナ入力以外の)外部入力端子なんかいらないので、もっと簡素で安いものがほしい」という消費者の選択肢がなくなってしまう。山本弘さんは、総合的には私よりだいぶ頭のよい方。そういう方でさえ、ときにこういうことをいいだす。
あと、「ケーブルテレビを利用している=セットトップボックス(STB)を使っている」というのも山本さんの思い込み。私は12年ほどケーブルテレビを利用しているが、地上波のテレビ放送をケーブル経由で視聴するだけなので、STBは一度も使ったことがない。同軸ケーブルをテレビのアンテナ入力端子に直結している。
……う、知りたい情報が載ってない。「ケーブルテレビ利用者の**%はSTBを使っていない」みたいな事実を知りたかったのだが。
「ホームページでは説明しているはずですが」
とカスタマーセンターの人は言うのだが、調べてみたら、案の定、そんな説明はどこにもなかった。
まず、ケーブルテレビを利用しているからといって、「アンテナ入力だけでは録画ができない」とはいえない。私と同様、STBを使ってない人もたくさんいるはずだからだ。それに、私は多チャンネルの契約をしたことがないから予想で書くのだが、STB利用者であっても、STBの手前にレコーダーを接続したら、地上波テレビ放送の録画だけならできるんじゃないか? もしそうだとしたら、山本さんが求める「ケーブルテレビは録画できません」なんて表記をする方が、よほど誤解を招くことになると思う。
次に、HDD搭載ハイビジョンBDレコーダー DMR-BRT210 詳細(スペック)には、きちんと入出力端子の情報が記載されている。こういうのを「見ないのが当たり前」と強弁するのがまかり通る世の中は嫌だね。
消費者がそこそこ賢いことを前提とすればこそ、大半の物やサービスの売買契約は簡素化されている。もしカタログや説明書を読まないものぐさな人が一切の不利益をこうむらないようにしなければならないとすると、家電を買うたびに、30分以上あれこれ説明を受けなきゃならなくなるんじゃないか。そんなのはアパートの賃貸契約とかだけでもうたくさん……。
これらの記事とはてブの反応を読んで気になるのは、「自分がクレーマーになる可能性」を心配する人って、やっぱりいないんだな……ということ。
「自分の怒りは正しい怒り」という前提を疑う習慣が必要。今日、山本弘さんの記事に「そりゃないでしょ」と感じている自分は、むしろそうした経験の積み重ねゆえに、「私はそんなに怒りっぽい方じゃない。もし私が怒るとしたら、それはよっぽどのことに違いない」と過信してしまう。
「自分より頭がいいはずの山本さんでさえ、こんなことでプッツンきてしまう」という現実に、私はもっと恐怖を感じるべきだ。「きっと自分は、もっともっとどうでもいい小さなこと、自分が気をつけて回避すべき躓きでブチ切れて、店員を困らせるに違いない」と予想しなければならない。それを「なーんだ、山本さんって自分よりバカだったんだ」と勘違いするから、クレーマーは減らないんだと思う。
以上、自分で自分に言い聞かせる記事でしたー。