最初にお断りしておきますが、この記事において「カッコ書き」は引用を意味しません。
pollyanna “自身は埼玉大で教えながら1男1女を育てた”のに、そういうこと言えちゃうってのがわからない。
deztecjp id:pollyanna 「自分が苦労したので、同じ体験を後の世代にさせるのはしのびない」というパターンと考えれば、とくに不思議はないと思います。意見への賛否はともかくとして。
pollyanna id:deztecjp 元の産経の記事には「私も近所のお母さんたちもフーフー言いながら2、3人生み育てていた」「このあたり前が、もう一度あたり前になれば」とあったので、同じ苦労をさせたくないとは読めなかったのです。
ということで、元の記事を探してきました。
私は「わからない」という感想に引っ掛かる性格です。たいていのことは、好意的に話を補っていけば「ひとつの意見としては理解できる」ものであって、賛否とは別に、まずはその地点を目指すべきだと思っています。相手はこちらの話に耳を傾けないとしても、こちらは相手の主張を理解しておきたい。
長谷川さんの主張を私なりに要約すると「子育ては大変だけど、取り組むべき。ただ、育児と仕事の両立は難しいので、育児期には、女性は育児を優先するのがよい」となります。
さて、朝日新聞の記事によれば、長谷川さんは大学で教えながら2人の子どもを育てられたのだという。ただ、ずっとフルタイムだったのか、一時期は子育てを優先して仕事をセーブされていたのか。
仮にずっとフルタイムだったとすれば、「さすがに無理があった。子育てを優先すべきだった」という後悔をこめた話という解釈が、ひとつ成り立ちます。あるいは、「私には両立できたけど、ふつうの方には無理でしょう」という話とも受け取れます。
仮に仕事をセーブされていたとすれば、自分の体験を踏まえた、育児優先の提案ということになります。経歴を見る限り、長谷川さんは概ね順調にキャリアを積まれたわけで、「人生の一時期に仕事より子育てを優先しても大丈夫ですよ、私がその例です」という自負もあるのかもしれません。
つまり、どちらにしても話は通りますから、“自身は埼玉大で教えながら1男1女を育てた”のに、そういうこと言えちゃう
ことに、私は疑問を感じません。
以下、長谷川さんの主張に対する私の賛否を述べます。
長谷川さんは「出産・育児に適した年齢の女性が、仕事で男性と同じように働くことをよしとする考え方」を批判されています。その理由は、「子育てはたいへんなことだから」です。両立し難いことを両立しようとするから、少子化や晩産化が起きるのだ、というわけです。
同時に、長谷川さんが暗に否定されているのが、「親の育児負担を大幅に減らす」という解決策です。例えば、平日は朝から晩まで子どもを施設に預けて、平日夜と休日のみ子どもと一緒に暮らす……といった家族のあり方は、長谷川さんとしては受け入れられないのだと思います。
そして、これらの主張の背景にあるのが、性別役割分担の無批判な受け入れ、「大人は経済的に自立できているべき」という観念、「昔はできていたことがなぜ今はできないのか」という素朴な疑問です。
と、このように整理した上で、私の意見を述べます。
まず、性別役割分担について。統計から様々な性差が観察されるのは事実ですが、個人差の方が大きいこともまた事実です。ならば、基本的には、男性・女性を主語としない方がベターだろう、と思います。
次に、私は「子育て世帯は経済的に自立しなくてよい」と考えます。長谷川さんが「女性は育児優先、男性は仕事優先」と主張されるのは、「両親がともに育児を優先したら経済的に自立できない」と考えるからでしょう。「それでいい」と考えるなら、「両親ともに育休&時短勤務」で問題ないですよね。
それから、「昔はできていたことがなぜ今はできないのか」というのは私にも疑問なのですが、いっても詮無いことと思って諦めています。私がどう育てられたかを思い起こすに、あるいは現代の大家族の子どもたちの育てられ方などを見るに、人が生まれ育つのに大金は要らないと個人的には思うのだけれど……。
では、育児負担の軽減、とくに保育施設の充実については、どう考えるか。私は、現実的な解決策としては支持しますが、理想的な解決策ではないと思います。
理想は、親子のふれあいの時間をなるべく確保して、仕事の負担を減らすことです。男女問わずみんなが20~30代に仕事量をセーブする社会であれば、育休や時短勤務で不利になることはありません。その分の国内総労働時間の減少は、生涯労働社会の実現と、過剰教育の是正によって補完できると考えています。
また育児期の収入減は、ベーシック・インカムに類する人数比例の収入補助制度によって、かなりの程度まで緩和できるのではないでしょうか。年齢等の条件を問わず人数比例で配られる収入補助は、多人数同居に有利ですから。一人暮らしで月3万円もらってもオマケ程度ですが、4人暮らしで12万円なら大いに助かります。
「仕事を優先しないと生きていけない」から「育児の負担を減らす」というのが喫緊の課題なのはわかりますけど、「仕事と育児の両立」は、理想的にはもっと「仕事を減らす」方に重点を置くべきだと思う。
「家にいる母」に育てられた私としては、小学校を卒業するくらいまでは、親が子どもと多くの時間を一緒にすごせるようにしてほしい、という願いに似た気持ちがあります。休日だけ子どもに構おうとする父親って、私にとって「学校の先生より気持ちの遠く離れた存在」だったんですよね。父としては子どものことを深く思っているつもりだったのでしょうが……。
あとやっぱり、子育てって少しだけなら楽しいけど、いろいろ積み重なっていくと、仕事ほど面白くはないのだと思う。育児は変化が乏しいし、現金収入にならないし、やりがいも実感しにくい。「楽しい」と思える範囲内の育児負担って、かなり小さいのではないか。
問題は、親が楽しいと思えるふれあいの量では、子どもは不満だということ。育児負担の軽減に反対ではないけれど、どうしても歯切れが悪くなるのは、自分が親より子どもの方に共感するからだと思う。
前項では私の理想を書いたけれど、現在の日本の世論や少子化対策の流れからすると、両親がフルタイムで働ける環境が完成したら、だいたい大人はみんな満足してしまって、それ以上のことは実現されない気がする。もちろん、いま人々が求めている施策を実現することには賛成する他ないのだけれど。
shifting 産経はつい先日、「女は家庭で子どもを生め」と正論に書いたことを忘れて調子にのるな、アホたれ。
watto NHK経営委員で埼玉大名誉教授の長谷川三千子さんは何て言うんだろう?
長谷川さんの他の著作を読んだら「女性は仕事を辞めて主婦になるべき」とか書いてるのかもしれませんけど、たいていの人は産経の記事ひとつを読んだ印象で語っているわけでしょう。だったら、過剰に悪い方に解釈する理由は全くなくて、長谷川さんご自身の歩みなどと整合的な解釈を採用すればいい。
長谷川さんはご自身が大学でキャリアを重ねた方であり、女性が仕事で活躍すること自体を否定する立場だと考えるのは不自然です。とすれば、長谷川さんは他の人と同様に小保方晴子さんの成功を祝福されるのではないですかね。
なお私は、小保方さんが仮に育児のために仕事量をセーブされ、その結果として偉大な研究がまとまるのが数年遅てもよかったと思う。お相手の方が平凡な人だとしても、平凡な夫だけでなく、偉大な小保方さんも育休をとればいい。