Word の初級 Tips 集です。多くの類書が「困った」への対応として Tips を紹介しているのに対し、「非効率の改善」という切り口を採用しているのが本書の特徴です。「困った」は多くの場合「できない」に起因するため、類書は重箱の隅をつつくような内容に陥りがち。その点、本書は日常業務で毎日役に立つ内容となっており、お得な1冊となっています。この手のムック本としては少し値段が高いかもしれませんが、お勧めできます。
著者の基本的な主張は、知識を増やせば手間を減らすことができる、というものです。たしかに素人の非効率はたいてい、少ない知識で複雑なことをやってのけようとすることが原因です。Word には、それぞれの目的に応じた機能が用意されています。一般的な「やりたいこと」にはほぼ対応しているので、きちんと勉強すれば業務を非常に効率化できます。勉強の手間は1回、その効果は何年も有効です。
本書の欠点は、個々の便利技はよく理解できるけれど、Word の全体像は結局、把握できないことです。最後の答えだけ次々と示され、それぞれの機能が Word という巨大なアプリケーションの中でどのような位置付けにあるのかがハッキリしないのです。そのため、本書に掲載されていない項目について、ほしい機能を自力で発見する能力は身につきません。しかしこの欠点は、さっと調べてすぐ使える全ての本に共通しています。
きちんと学びたい初級者には、傑作「文書作りでつまずくWordのしくみと落とし穴」をお勧めしておきます。