Web サイトの製作・管理におけるアクセシビリティとユーザビリティの考え方について、JIS 規格に基づき解説したテキストです。本書は既刊の類書と比較して現場での使い勝手がよいのが特徴です。
本書のアクセシビリティ解説は JIS X 8341 に準拠しており、各分野の主な留意点について「必須」と「推奨」の識別マークが付されています。まずは JIS で「必須」とされている項目に対応し、続いて「推奨」項目をチェックする、といった使い方ができます。本書は JIS が指摘する全内容は収録していませんから、JIS も手元に1部用意しておく方が無難ですが、日常業務においては本書1冊で問題ないでしょう。
ただし解説の大半は製作時の留意点なので、更新・管理については物足りない内容です。しかしこのあたり JIS の規定は非常に簡素かつ抽象的。著者は努力して具体的でわかりやすい記事に膨らませています。
一方、ユーザビリティの解説は、概論、主な留意点、試験の方法といった構成になっており、10年近くの間に積み上げられた Web デザインの「常識」をざっと眺める内容となっています。基本事項をコンパクトにまとめているので、ていねいに読み確実に学習されることを勧めます。
製作会社の方が本書を読んで満足されるようだと心もとないのですが、発注側はとりあえず本書を読んでおけば安心できます。
なお、趣味で Web サイトを運営されている方にはオーバースペックですから「ウェブ・ユーザビリティ&アクセシビリティ・ガイドライン―誰もが使いやすく、アクセスしやすいウェブサイトをデザインするための80の指針」など、他書を検討されることを勧めます。