タイトルは入門書然としていますが、初級者には歯が立ちません。ただし到達レベルは初級の域を超えず、本書をマスターしても高度なこと(例えば美麗なビジュアルデザインと理の通った文書構造マークアップの両立)ができるようにはなりません。
本書の最大の欠点は、小難しい話を持ち出されると「うへぇ」となってしまう初級者の事情に配慮されていないことです。米国の事情は知りませんが、少なくとも日本で本書をスイスイ読めるのは HTML をきちんと理解し、現状の様々な問題について知識と理解のある方だけです。のっけから「W3C が云々」「多様な環境」「情報の共有」「拡張性」というのでは、誰が読むのかわからない。
また、本書はレイアウトも説明の仕方もこなれておらず、読了後の辞書的な利用に向きません。情報量に問題があるのではなく、情報のまとめ方、見せ方に問題があるということは、競合書籍である「XHTML+CSSで書くホームページ構造デザインガイド」を比較検討いただければすぐに理解できるはずです。
W3C の主要メンバーでもある著者の解説は信頼できるものですが、読者の興味に配慮した導入と、重要事項と瑣末な知識の切り分けに失敗している本書は、お勧めできません。HTML 経験者の XHTML 入門には前出の「デザインガイド」を勧めます。XHTML の文法を学ぶなら「詳解 HTML&XHTML&CSS辞典」で十分でしょう。
本書が主に解説するのは XHTML1.0 ですし、Web サイト作成自体の初心者には(XHTML に触れない本ですが)「HTMLとスタイルシートによる最新Webサイト作成術」を勧めます。