本書のタイトルには注意が必要です。XHTML、CSS、XSL、XForms、DOM、XLink などの比較的簡素な解説が延々と続く本書は、なるほど幅広い内容を扱っているわけですけれども、XHTML の解説を除けば、網羅性と実際の活用において疑問が残ります。この内容と構成で「大全」と呼ぶことには抵抗があります。
W3C の勧告は、過去の勧告や各種 RFC を参照して説明を省略している箇所が少なくなく、素人が眺めても何がなんだかよくわからないのが実情だ……といってもよいでしょう。そこに本書が登場する素地があります。ただし本書は、仕様書がちんぷんかんぷんの初級者を対象としていません。比較的読みやすい HTML4.01 の仕様書を概ね読み解くことができ、XHTML を取り巻く状況について一定の知識があることが前提となっているのです。
HTML が XML ベースの世界へと大きな一歩を踏み出したことにより、視界がグンと広がったのは事実です。各技術は、既に業務レベルでは活用が進んでいますが、趣味のレベルではその恩恵にあずかることはほとんどありません。したがって趣味で Web サイトを作っている方が XHTML の文法を勉強するためだけに本書を購入するのは間違いです。
解説の文章もレイアウトも生硬で、とっつきにくい本です。現状では、本書の扱う技術については XHTML よりも XML の方が切り口としてふさわしいと思います。「標準XML完全解説〈上〉」「同〈下〉」などと比較検討されることを勧めます。