Book Guide 2009-03-16

「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?

「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? ~世界一わかりやすい経済の本~ (扶桑社新書)

テレビニュースが理解できるようになる本

細野真宏さんによるやさしい経済解説の最新刊です。1・2章で「論理的思考」の大切さを説き簡単な実践例を紹介、3章で世界金融不況と家計の関係を読み解き、4章で日本の年金の仕組みを解説します。

既刊の細野本は(ほぼ)テレビニュースだけを情報源としていましたが、本書の年金編は細野さんが参加した社会保障国民会議の資料も参考に書かれています。しかし本書で扱う内容は新聞の経済面等で概要が紹介された範囲にとどまり、「一般市民が常識として理解しておきたい」範囲を逸脱しません。この思い切った「到達レベルの低さ」が細野本の魅力です。

2004年の年金制度改革で永久均衡方式から有限均衡方式へ転換した経緯、マクロ経済スライドの解説で保険料水準の上限を定めつつ各世代の85歳時点の所得代替率が揃うカラクリの説明がないこと、などに現行の年金制度を批判する向きからは不満もあるでしょう。

結局、「少子高齢化が進んでも年金は大丈夫なのか」という根本の疑問は、本書を読んでも解消されません。ごく簡単に書けば、日本経済が拡大していけば緩やかな調整で済み、そうでなければ大胆な調整が必要になります。しかし将来予測は困難なので、現行制度に沿って穏当な解説をした判断は支持できます。

経済に詳しい人は、一般市民であっても、もっと多くのことを知るべきだ、と考えるかもしれません。しかし私は、「原油価格の上昇で鶏卵の値段が上がる理由を誰もが説明できる社会を実現する」というのは、十分に高度なミッションだと思います。本書が多くの方に読まれることを期待します。

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