手堅い分析が信頼されているエコノミスト:上野泰也さんの4冊目の単著です。処女作は経済分析入門、第2作はマクロ経済:需要編、第3作は同:供給編、そして本作では、より個別具体的な話題を取り上げています。
全11章。1~10章では10の話題を取り上げ、経済学の論理に著者の経験・価値観を加味して分析・提言を行います。11章では秋田県の現状を10年後の日本の姿と見立てて分析し、今後の日本に必要な経済政策を考えます。
各章とも、まず何らかの資料を示して分析を行い、補足資料を紹介しつつ著者の考えを述べる、という流れになっています。落ち着いた語り口で、安心して読めます。議論の前提がきちんと示されますので、著者の価値観・提案に同意できなくとも、自分の考えを深める役に立つでしょう。
なおタイトルにも使われている「依存症」は、あまり意味のないキーワードです。「依存」という言葉のネガティブなイメージにとらわれず、データを注視してください。実際、本書で紹介している様々な「依存」について、著者が「解消すべき」という立場を明確にしているのは3・5・6・7章くらいです。
11章以外は10~20頁程度で、経済エッセイ集として気軽に読める面白い本です。1~10章の結論・まとめをもう少し明確にしてほしかったとも思いますが、大きな不満ではありません。